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感想 『アナザー・エンディング 仮面ライダーブレイブ&スナイプ』でなぜ小姫を復活させる必要があったのか

 『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』の2年後を描いた『仮面ライダーエグゼイド』の三部作Vシネマ、『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』。

三部作の第一弾であるPart1『仮面ライダーブレイブ&スナイプ』が、2018年3月28日のDVD・ブルーレイの発売に先立って、2018年2月3日から劇場で上映開始となった。

 

仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング 仮面ライダーブレイブ&スナイプ [Blu-ray]

 

上映会場が少なく、多くの人たちは恐らくDVDやブルーレイが発売されたときに初めて今作を観ることになると思う。

私自身も、ブルーレイを買うことを決めていたので発売日まで我慢しようか悩んでいたが、たまたま上映劇場の近くで用事があったため劇場で観た。

この記事の本文ではネタバレも扱うのでネタバレを恐れてこのページを閉じる今作未見の方たちに対して予め、「飛彩や大我のファンなら絶対に観るべき作品」とだけ言っておこう。

 

Part2とPart3は観ていないので全体像は分からないが、現在分かる情報を基に、今作の感想を述べたい。

 

『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング Part1 仮面ライダーブレイブ&スナイプ』のネタバレを含みます!!

また、『仮面ライダーエグゼイド』本編及び関連する派生作品のネタバレも含みます!!
 

 

小姫の復活

百瀬小姫は、飛彩の恋人でありながら、大我が救えなかった患者であり、飛彩と大我の間の確執のきっかけとなった人物だ。

そんな彼女が今作で一時的に復活したのが物語の大きなポイントとなっている。

 

『40話 運命のreboot!』で檀正宗がリセットを発動させた影響で『38話 涙のperiod』で完全に消滅したはずの小姫のデータが復元された、という本編に忠実な設定が非常に良かった。

その辺は、流石本編を前話執筆した脚本家の高橋悠也氏なだけあって、毎度設定を細かく練っていくのが上手い。

 

シンデレラを彷彿とさせる「小姫は0時になると消滅する」設定も「小姫」という名前に相応しく、復活した小姫に切ないお姫様のように演出する巧妙な演出だと感じた。

「タドルレガシー」が捕らわれし姫を救い出すゲームであることにも繋がる。

 

「世界一のドクター」へ

鏡飛彩には、小姫という名の恋人が過去にいた。

当時、ドクターの勉強に集中するあまり、小姫に対して冷たく接してしまうことが多かった。

 

そんな小姫は、ゲーム病にかかってしまい「世界で一番のドクターになって」飛彩と言い残して消滅してしまう。

 

飛彩は、小姫が消滅してしまったのは、飛彩との時間を過ごせないことにストレスを抱え込んでいたからだと思い、罪の意識に苛まれ、小姫を忘れることができないままでいる。

 

 

しかし、『33話 Company再編!』で飛彩は、檀正宗に小姫を復活させる能力があることを知り、ドクターたちを裏切って小姫を復活させるかどうかで揺らいでいた。

そんな究極の選択を迫られた飛彩は、『38話 涙のperiod』で、小姫の言う通り「世界で一番のドクター」になって目の前の命を絶対に見捨てないことをことを決意。

 

そして最終回では、飛彩は小姫の笑顔をもう一度取り戻すことを決意。

 

 

今作で飛彩は、檀黎斗のゲームの一環で復活させられた小姫と再び向き合うことになる。

 

しかし、今作ではラヴリカに洗脳された状態で復活し、ラヴリカと結ばれてしまう。

そんな小姫は、ラヴリカには笑顔で接するものの、飛彩に対しては真顔しか向けていなかったのが印象的だ。

「小姫の笑顔を取り戻す」ことを願っていた飛彩にとっては相当な衝撃だったのではなかろうか。

 

また、飛彩と小姫の馴れ初めも今作では描かれている。

学食でもラーメンが冷めてしまうくらい我を忘れて勉強したり、ナイフとフォークを使って鯖味噌を食べたりする飛彩に小姫がツッコミを入れながらも徐々に惹かれていくという、非常に微笑ましいシーンだ。

小姫は真剣にドクターを目指している飛彩に惚れたことが分かる。

本編では、飛彩は無器用で恋人としっかりと向き合わなかった人物として描かれていたものの、今作を観ると、実は小姫がそのような飛彩の姿に惚れていたのだと判明する。

今作を観ると、飛彩と小姫の関係性の見方が変わってくる

 

最終的には、大我がクロノスの能力で小姫を洗脳から解放したことにより、意思を持つ小姫と飛彩が話し合うことに成功。

ずっと引きずっていた「小姫の目を見てあげなかったことに対する罪悪感」を漸く手放すことができた、飛彩にとっての救いの瞬間になったに違いない。

そして、恋人の小姫に改めて (素っ気なくて不器用だが)「世界一のドクターを目指す飛彩」を肯定されて、漸くドクターとして前に進むことができたのではないか。

小姫「初めて会った時から、飛彩は飛彩だった。

 

最終的に小姫は再び消滅してしまうものの、最後の最後に今作で初めて、小姫が飛彩に笑顔を向ける。

飛彩がずっと見たかった顔だったと考えると我々も感極まると同時に、二人の恋の切なさに涙を禁じざるを得ない。

飛彩が「世界一のドクター」として改めて前に進むことを確認できた、飛彩の物語の「真のエンディング」となったと感じる。

 

「一人で背負い込むドクター」へ

花家大我は、『仮面ライダーエグゼイド』では一貫して「一人で背負い込む」人物として描かれる。

 

小姫のゲーム病治療でグラファイトを取り逃してしまって以来、小姫を救えなかったことに関する強い責任を感じ、飛彩に恨まれるように振舞う。

また、自分をドクターとして認めてくれた西馬ニコにも献身的に寄り添う。

 

更には、そんなニコが命がけで仮面ライダークロノスに変身させられそうになった際にも、大我がニコを阻止して、仮面ライダークロノスに変身する役を買って出る。

このようにふるまえるのは、大我は自分には「失うものがない」と思っているからだ。

 

 

『38話 涙のperiod』で小姫よりも自分の命を選んでくれた飛彩に対する感謝と同時にとてつもない罪悪感で苦しめられていたはずだ。

だからこそ、小姫を復活させるためにずっと仮面ライダークロニクルのガシャットをこっそりと起動し続けていた。

 

今作でも大我は、そのような「一人で背負い込むドクター」としてどこまでも真っ直ぐに進んでいく。

 

目的遂行のためにポッピーから強引にバグルドライバーⅡを奪ったり、久しぶりに「ガシャットを寄越せ」と言ってブレイブと戦ったりしたが、本編初期の大我を彷彿とさせるこれらのシーンからは大我の必死さが伝わってきた。

そして遂に、バグスターしか使いこなせないはずのバグルドライバーⅡで仮面ライダークロノスに変身してしまう。

 

苦しみながらも仮面ライダークロノスに変身する場面は特にアツかったし、クロノスの力でポーズして真っ先に小姫をラヴリカの洗脳から解放したのも、飛彩への想いの表れになっていてグッと来た。

最終的には飛彩に小姫と話す時間を作ってあげられたのだから、長年大我を苦しめていた罪悪感は漸く軽減したのかもしれない。

 

しかし、次項でも述べるが、ニコがアメリカに旅立ったことにより、「花家医院」で独りでゲーム病患者たちの面倒をみることになる。

大我が「一人で背負い込む」孤独のドクターであることを我々は再確認できた、大我の物語の「真のエンディング」となったと感じる。

 

「天才ゲーマーN」へ

「天才ゲーマーN」という名で年収1億を稼いでいたプロゲーマーの西馬ニコは、本編では大我を通して「医者」という仕事を見る。

 

『42話 God降臨!』でパンデミックが生じた際にニコは子供たちに寄り添い、その姿を見ていた明日那に医療の道に向いているかもしれないと言われる。

これがきっかけで、『44話 終わりなきGAME』で医療事務のバイトとして花家医院で働き始める。

割と多くの視聴者が納得した、ニコという登場人物の終着点だったのではなかろうか。

 

 

しかし、今作ではニコをライバル視するルークが登場して、アメリカで自分とゲームで勝負をするように求めてくる。

(ちなみにルーク君、アメリカ人のはずが役者の出身もあって「ニコ!」って叫ぶところのイギリス訛りが強すぎて笑ってしまった。笑)

ニコは嫌がるが、ルークがラヴリカのゲーム病にかかってしまうため、花家医院で看病せざるを得なくなる。 

 

ニコ「今の私って、私じゃないのかな。

 

ニコは大我にこう尋ねるものの、大我は、ニコが患者ではなくただのバイトだと言い、アメリカへ行くように促す。

ニコと二年間共に過ごしていたからこそ、大我はニコがゲームをしている際に一番輝いていることに気づいていたのだろう。

だからこそ、大我はニコが「ただのバイト」で自分には「失うものがない」と言い、ニコを突き放す。

 

しかし、ニコも精神的に成長して大我の意図をどうやら汲み取っているようなので、大我の言葉を真に受けず、笑顔でアメリカに向かう。

大我に、どこへ行っても自分が主治医だと言ってもらい、喜んでいる姿も可愛い。

 

Part2やPart3でもニコの今後に関しては描かれていく予定らしいのでこれから変わるかもしれないが、少なくとも今作では、ニコが「天才ゲーマーN」として前に進むことを決意できた終わりになったと感じる。

これからニコがどのように描かれていくのかが楽しみだ。

 

結論

今作は、飛彩、大我、ニコがそれぞれ向かうべき道を再確認して前に進む物語であった。

 

それぞれが本当に未来へ進むためにも、飛彩と大我の確執の原因である小姫が、今作で一時的でありながらも意思を持った形で復活したのは必要不可欠であった。

今作は、「小姫の目を見てあげなかったことに対する罪悪感」を持つ飛彩と、「小姫を消滅させてしまったことに対する罪悪感」を抱く大我が、それぞれの罪悪感から漸く解放され、前へ進めた物語だ。

結局小姫は再び消滅してしまったが、小姫やゲーム病で消滅した大勢の患者を復活させるために前へ進むことを決意できるような素敵な終わりになったと感じる。

 

そして小姫とは直接関係がないものの、ニコも今回の小姫の事件を通してゲーマーとしての道を進むことを決意することができた。

 

当然、本編最終回や『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』でエグゼイドたちの物語はしっかりと綺麗に終わらせているが、今作はブレイブやスナイプに関わる「もやもや」を解消してくれたことを考えると、最終回の延長線上にある物語としてしっかりと機能しているように感じた。

勿論後付けの部分もあると思うが、無理やりとってつけた感のある場面は特になく、本編であまり掘り下げられなかった部分をしっかりと掘り下げてくれることに重点を置いていた印象だ。

特に、飛彩と小姫の関係性への見方が今作を観てからガラッと変わった。

 

相変わらず暴走気味な檀黎斗や、美人女医の前でデレデレする九条貴利矢など、飛彩とスナイプ以外にも見どころのある登場人物もたくさんいた印象だ。

 

あと二作あるが、どのようにエグゼイドの物語が幕を閉じるか今から楽しみで仕方がない。

次作は全裸神!

 

 

 

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