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感想 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』はクロスオーバーの手法をどう変えようとしたのか

仮面ライダーファンであれば誰もが待望していたであろう『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』が12月9日に遂に公開された。

 

仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー

 

平成二期シリーズに突入して以来すっかり恒例となった冬の現行作品と前作のクロスオーバー映画 (いわゆる「冬映画」)。

一種の「お祭り映画」ではあるが、この「冬映画」によって、平成二期作品の出来事が同一世界での出来事という設定になり、半ば強引にではあるが各作品の世界が繋がることとなった。

 

初めての「冬映画」である2009年の『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』では、前作パート、現行作品パート、そして最後にはコラボパートという三部構成の映画に挑戦。

その形式が (多少は変化球を交えてではあるが) 2014年の『仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル』まで継続する。

2015年の『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』では三部構成が撤廃され、現行作品と前作のライダーを同時に描く一本のストーリーへと統合した映画に挑戦。

そして昨年2016年の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマンVSエグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』では、前年と同様に一つのストーリーにまとめつつ、レジェンドライダーとしてドライブ、鎧武とウィザードも出演して話題を呼んだ。

 

このように近年試行錯誤を繰り返してきた「冬映画」ではあるが、「平成最終章」と銘打たれた今作はどのような作品になったのか?

今回はそれを考察していきたいと思う。

 

『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』のネタバレを含みます!!

また、登場するライダーの各作品に纏わるネタバレも含みます!!

 

 

映画をBuildした方々

期待の新星、上堀内監督!

今作のメガフォンをとったのは、上堀内佳寿也氏

『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』で特撮の面白さに感銘を受けて以来、『仮面ライダーキバ』から助監督として平成仮面ライダーシリーズを支え続けてきた。

そして、今年に入って『ゴースト RE:BIRTH 仮面ライダースペクター』や『仮面戦隊ゴライダー』などの番外編の監督を務め、

更には『仮面ライダーエグゼイド』の「二人のマイティ回 (『31話 禁断のContinue!?』) クロノス初登場回 (『32話 下されたJudgment!』) 、パラドが改心し超強力プレイ回 (『39話 Goodbye 俺!』と『40話 運命のreboot!』) を監督し独特の演出でファンからの注目を集めた。

 

そんな上堀内監督が映画の監督として今作で初抜擢されたと聞いた時は、この人選に非常に驚いた。

上堀内氏の演出は大好きなので今作に対しては期待しかなかったが、それ以上に「東映さんに、本編の監督を4回しか務めたことのない人に映画の監督を任せるような挑戦的な姿勢があったのか…」と関心した覚えがある。

 

上堀内氏は、今作に登場するレジェンドライダーの全ての作品に助監督として携わっていた。

本作のメガホンを取った上堀内佳寿也監督は、今回の映画で復活を果たすレジェンドライダー『オーズ』『フォーゼ』『鎧武』『ゴースト』では助監督として参加し、キャストたちと濃密な時間を過ごしてきた。それだけに本作を演出したときの感想を求められると、「懐かしかったですね。助監督として1年間近く過ごした歴代作品のキャストと、今度は監督として再会できた。ただ懐かしいだけでなく、みんなそれぞれ成長して帰ってきたことに驚かされ、お互い感慨深いものがありました」と熱っぽく語っていた。

 

— 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』上堀内監督、レジェンドライダーたちとの再会「それぞれの成長に驚きと感慨」 | マイナビニュース

篠宮:レジェンドライダーたちを見て、「あのときを思い出すなぁ」みたいなことってあるんですか?

上堀内:懐かしいという感情はもちろんあります。それと、僕がいうのもおこがましいですけど、それぞれが人間として、役者として、しっかり成長していることを感じました。

衣装合わせなんかで会ったときは「お、久しぶり!」って、軽い感じでしたけど、いざ撮影に入ると、その瞬間、瞬間で当時のことを思い出しました。1シーンの短い時間に存在感を残して、花を咲かせてくれる人たちに成長していることに、熱い気持ちになりましたね。

篠宮:先日テレビ番組の収録で、アンガールズ・田中卓志さんとご一緒したときに、「フォーゼ」で助監督だった上堀内さんが今回の映画で監督を務めて、感慨深かったというお話もされてました。

上堀内:セカンド助監督は現場を回していくポジションで、他の助監督よりキャストさんたちと関わる機会が多いんです。なので、余計にそう感じていただいたのかもしれないです。そんな方々と監督として再会できて、こちらも感慨深いものがありました。

 

— 仮面ライダーシリーズの新星・上堀内監督にインタビュー!ファン心を掴む演出の裏側にあるものとは | シネマズ by 松竹

インタビューでの発言からも見て取れるように、現場に立ちキャストたちと寄り添ってきた上堀内氏だからこそ、各レジェンドライダーの登場を本筋に絡めてしっかりと意味を持たせた愛のある復活になったのではないか。

 

そして、そんな仮面ライダーへの愛と、「怖いもの知らず」の挑戦的な姿勢があるからこそ、「こういうの観たいな」が撮れて、結果的に多くのファンの期待に応える、「平成最終章」に実に相応しい画が撮れたのではないか。

篠宮:(中略) 上堀内監督がどうしてファン心理をくすぐる演出ができるのか気になっていたんですが、そこはファンに寄せてはいないんですか?

上堀内:寄せていると言うか、どちらかというと僕が観たいものを撮っています。たとえば「平成ジェネレーションズ FINAL」のバイク戦も、「こういうの観たいな」というところから発展させたアイディアなんです。

自分がイチ視聴者として観たときに、どういうものをどういうテンポで観たいかな、というところは考えますね

 

— 仮面ライダーシリーズの新星・上堀内監督にインタビュー!ファン心を掴む演出の裏側にあるものとは | シネマズ by 松竹

 

ベストマッチな二人の脚本家

これまでの「冬映画」では、2015年の『仮面ライダー×仮面ライダー ゴースト&ドライブ 超MOVIE大戦ジェネシス』で三部構成が撤廃され一本のストーリーへと統合されて以来、脚本家に関する試行錯誤が結構あったという観を呈する。

2015年の『超MOVIE大戦ジェネシス』では、仮面ライダーシリーズとは縁も所縁もない林誠人氏を脚本家に起用したものの、映画の企画段階では『仮面ライダーゴースト』のプロットが未だ定まっていなかったこともあり、テレビ本編との整合性などに多くの問題が見受けられた。

それを受けてか、2016年の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマンVSエグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』で、ゴースト、ドライブ、鎧武、ウィザード関連のシーンを含めた全編の脚本を、当時『仮面ライダーエグゼイド』のテレビ本編の脚本を同時並行で進めていた高橋悠也氏が一人で執筆。

 

そして今作の脚本は、『仮面ライダービルド』のテレビ本編のメインライターである武藤壮吾氏と、高橋悠也氏の二人による共同脚本。

 

今作の中でも、武藤氏がビルド関連のシーンの脚本を執筆。

『仮面ライダービルド』のテレビ本編と連動して桐生戦兎の正体を示唆する展開を組み込めたのも、本編と同じ脚本家を起用したことにあるだろう。

更に、今回の映画で万丈龍我のライダーとしての成長に焦点を当てたのも、テレビ本編で龍我が仮面ライダークローズの力を手に入れた後であると考えると納得がいき、綿密に計算された脚本に脱帽した。

テレビ本編と映画の脚本を同時並行で書き上げる大変さは我々には計り知れないが、その努力のおかげで『仮面ライダービルド』の物語にとっては必要不可欠な映画となったのではないか。

 

一方では、高橋氏がエグゼイド関連並びにレジェンドライダー関連のシーンの脚本を執筆。

エグゼイド周りでは、永夢とパラドの相棒的関係性を物語の中心に据えつつ、一年間戦い抜きドクターとして逞しくなった永夢たちドクターライダーの姿を描いてくれた。

黎斗の「ゲームマスター」的立ち位置も生かす物語になっていて、まさに「エグゼイド、最後の戦い」に相応しい活躍をしていたのではないだろうか。

更には、2018年初春に公開されるVシネマ『仮面ライダーエグゼイド トリロジー アナザー・エンディング』にも繋がることも示唆されている。

そして、後述するようにレジェンドライダーに纏わる部分も非常に丁寧に扱ってくれていた。

 

そんな二人の連係プレイがあったからこそ、ビルド、エグゼイド、そしてレジェンドライダーを最大限に生かした脚本が完成したのではないだろうか。

「共同脚本」という考えも恐らくこれまでの「冬映画」の試行錯誤から出た一つの答えであり、それが今回の映画で功を奏したように思える。(脚本を書く側の負担は計り知れないが。)

 

ビルドとエグゼイドを繋げる大森P

そして今回忘れてはならないのは、『仮面ライダービルド』と『仮面ライダーエグゼイド』のプロデューサーである大森敬仁氏だ。

 

というのも、そもそも上堀内氏を監督に抜擢したのは大森プロデューサーだからだ。

オジンオズボーン・篠宮暁(以下、篠宮):早速ですが、どういう経緯で本作の監督に決まったんですか?

上堀内佳寿也監督(以下、上堀内):確か、「エグゼイド」の39話、40話の編集作業をした帰り道に、大森敬仁プロデューサーと映画の話をしていたんです。そしたら、「じゃあ、そういうことで。お願いします」と、さらっと。撮影所に僕の「えぇー!!」って声が響いてました(笑)。

 

— 仮面ライダーシリーズの新星・上堀内監督にインタビュー!ファン心を掴む演出の裏側にあるものとは | シネマズ by 松竹

監督の座におけるこのような勇気ある人選には前例が少なく、今回のようにな抜擢をするような決断力を持つプロデューサーは (私の知る限りでは) そうそういないと思う。

だからこそ、今作のプロデューサーが大森氏で、その彼が上堀内氏のテレビデビュー作である『仮面ライダーエグゼイド』にも携わっていたことが今作に大きな影響を及ぼしたと感じる。

大森プロデューサーの上堀内氏に対する信頼がかなりのものであったことが伺える。

 

平成二期で二作品連続でプロデューサーを務めたのは大森氏が初めてだ。

その人選のおかげか、今回初めて「夏映画」(『劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』) と「冬映画」 を繋げる試みがなされたことも特筆すべき点である。

この点に関しては後述する。

 

二つの世界の衝突

平成二期シリーズに入ってからは、「冬映画」での共演や共通の敵財団Xなどの存在などから、『仮面ライダーW』から『仮面ライダーエグゼイド』までの仮面ライダーたちが同一世界上に存在するということが示唆されている。

しかし、『仮面ライダービルド』の世界には、他の平成二期シリーズにはどう考えても存在していなかったスカイウォールがある。 

 

そのような矛盾がある中、今回のクロスオーバーを可能にするために今回は「スカイウォールが存在する世界」(仮面ライダービルドの世界) と「スカイウォールが存在しない世界」(仮面ライダーエグゼイドやレジェンドライダーの世界) の二つの世界を敢えて別世界として描いた。

そして不老不死の身体を手に入れるために平行世界移動装置のエニグマを介して二つの世界を衝突させることを敵の最上魁星の目的とすることで、物語の中心に「平行世界」を据えたのは、設定矛盾を回避する非常に賢いやり方に感じた。

 

また、エニグマの力によって、龍我が永夢と、そしてパラドが戦兎と行動するのも、映画ならではの特別感があり印象的だった。

(パラドがスカイウォールが存在しない世界に迷い込んで以来二年間もビルドを探していたという設定には驚いたし、その間パラドが何をしていたのか割と気になるところではある。)

 

龍我の成長

今作には、「万丈龍我がドクターライダーやレジェンドライダーたちの戦いを見て学ぶ」というテーマが中心にある。

桐生戦兎は既に仮面ライダーとして戦う決意はできていて芯も強いため、今回二号ライダーの成長に焦点を当てたことには納得がいく。

『仮面ライダービルド 11話 燃えろドラゴン』で龍我が仮面ライダークローズになって間もないため、龍我の成長にとっては、戦兎以外の仮面ライダーが戦う姿を見て学ぶ貴重な機会になったのではないだろうか。

 

 

最初は、パニックが発生していて多くの命が危険にさらされているのにも関わらず、スカイウォールが存在しないことに関して明日那に問い詰めるような身勝手さが目立っていた。

戦兎が形容する通り、龍我はまさに「迷える子羊」であった。

 

 

変身能力を失ったドクターライダーが必死に抵抗する姿を見て、

「変身もできねぇのに、なんでそこまで…?」

と問いかけたり。

(龍我くん、君もクローズになるまではあれほど生身で戦っていたのに何を今更!ってツッコみたくなる気持ちはめちゃめちゃあったが、それでも純粋に問いかける龍我の姿には未熟さが感じられてよかった。)

見ず知らずの人たちのために、頼まれてもいないのに戦う永夢や映司を不思議に思ったり。

 

そんな未熟な龍我は、仮面ライダーたちが頼まれてもいないのに、誰からも感謝されるわけでもないのに集結して戦う姿を目の当たりにする。

それも、世界各国からや宇宙の彼方からも。

ビルドである桐生戦兎は、愛と平和のために。

エグゼイドである宝生永夢は、人々の笑顔を取り戻すために。

ゴーストである天空寺タケルは、未来に繋ぐために。

鎧武である葛葉紘汰は、育ててくれた星の誰一人見捨てないために。

フォーゼである如月弦太朗は、世界中のダチを守るために。

オーズである火野映司は、手の届く限り世界を守るために。

 

そんなレジェンドライダーたちの姿を見て、「バカばっかだ…」と呟きながらも、ついに龍我は「仮面ライダークローズ」として戦う理由を見つける。

自分が信じた、自分を信じてくれたもののために。

 

この流れは割と王道に見えるが、レジェンドライダーを登場させるという制作側の都合を龍我の成長と非常に綺麗に絡めた作りになっていたと感じる。

欲を言えば、これだけ龍我の成長に着目するのであれば最終決戦でクローズにも戦って欲しかった気もするが…

 

以後、お見知りおきを?

平成二期シリーズになってからは、新ライダーはお披露目として「夏映画」で唐突に現行作品の世界観に「乱入」して、敵を倒して去っていくのが定番となっていた。

 

しかし今回、『劇場版仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング』でのビルドの先行登場は映画本編から切り離し、エンドロール後にエグゼイドの成分をフルボトルで唐突に抜き取る、という衝撃的な登場に挑戦。

一部のファンの間で「ビルドは通り魔!」などと言われる羽目になり物議を醸したが、結果的には「冬映画」への期待を高めるクリフハンガーとしては成功した。

 

「『トゥルー・エンディング』の最後でエグゼイドの成分を抜き取ったビルドの目的は?」という疑問に今作で答える作りになったことで、「夏映画」における次作ライダーの先行登場にお披露目以上の意味を持たせることになった。

 

『仮面ライダービルド 9話 プロジェクトビルドの罠』で葛城巧に『トゥルー・エンディング』に登場したビルドと同様の台詞を言わせることによって、視聴者にヒントを与えてくれている。

「これがビルド。『作る』『形成する』って意味の、ビルドだ。」

「以後、お見知りおきを。See you!」

 

今作の中では、『トゥルー・エンディング』に登場したビルドが葛城巧であったと答えることによって、

「では何故戦兎にはその時の記憶があるのか?もしかして戦兎と葛城は同一人物なのか…」

という疑問も視聴者に抱かせる。

勿論、映画を観ないでも『仮面ライダービルド』本編はもちろん楽しめる。

だが、『15話 桐生戦兎をジャッジしろ!』での戦兎の正体発覚より先に戦兎の正体を示唆することで、観客にお得感を与えてくれる、非常に美味しい映画になっているのではないか。

 

このような引継ぎが実現したのも、大森プロデューサーが『仮面ライダーエグゼイド』と『仮面ライダービルド』と、二年連続でプロデューサーを任されたからであろう。

 

愛溢れるレジェンドライダーの復活

今作を語る上でやはり欠かせないのが、レジェンドライダーたちの活躍だ。

 

初めて「レジェンドライダー」として映画に登場する天空寺タケル役の西銘俊さん。

前作『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマンVSエグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』で残念ながら本人出演が叶わなかった葛葉紘汰役の佐野岳さん。

『仮面ライダーフォーゼ』卒業後に国民的俳優に出世し、多忙の中ライダーに復帰した如月弦太朗役の福士蒼汰さん。 

『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』以来の共闘となる火野映司役の渡部秀さんとアンク役の三浦涼介さん。

 

それぞれのレジェンドライダーの俳優たちがそれぞれの想いで、この豪華な作品を作り上げるために集まってくれたのがファンとして非常に嬉しい。

勿論、レジェンドライダーの出演はレジェンドプロデューサーの力を借りて実現したようなので、そこの尽力も忘れてはならない。

 

そしてその豪華さで話題をかっさらってしまったレジェンドライダーたちではあるが、映画内ではあくまでもビルドやエグゼイドの戦いを支えたり龍我に刺激を与える役割を果たしていて、制作側の今作の主役たちへのリスペクトを感じる。

上堀内監督も、レジェンドライダーの出演キャスト公開時に念を押していた。

上堀内氏「(中略) で… 間違いなく今回レジェンドライダーの子たちも出てくれてるんですけど、ただ、やっぱり今回の作品を引っ張ってくれてるのは、えー、ビルドである、あの、犬飼君であったり、で、あとやっぱりここにいる飯島君を始めとするエグゼイドメンバーの、えー、力が一番、皆さん、強いですからね。今めっちゃ盛り上がってたけど、映像のときに。けど、やっぱりこの作品を引っ張ってるのはここにね、壇上にいるみんなだと思うので。その力が十分に発揮されて、画に反映されている作品だと思いますので。」

 

大物俳優の福士蒼汰さんなどが出演してくれているのだから、そこを宣伝で大々的にアピールしてもいいわけだが、しっかりとレジェンドたちを全員平等に扱ってくれたのは嬉しい。

だって、俳優が誰であるかは関係なく、仮面ライダーたちは皆それまで戦い抜いてきた「レジェンド」なんですよ。

 

 

レジェンドライダー関連の部分の脚本は高橋悠也氏が担当したようだが、レジェンドライダーが復活する経緯の描写も非常に丁寧で、リスペクトに溢れる仕上がりになっている

―― (中略) レジェンドライダーである『オーズ』『フォーゼ』『鎧武』『ゴースト』については、それぞれのシリーズの「その後」の姿として登場するとうかがっています。ライダーの中には、テレビや映画で変身能力を失った人たちもいますが、そこの部分も高橋さんがきちんと納得いく展開を考えられたのですか。

高橋:そうですね。『オーズ』だと、相棒のアンクがなぜ復活したのか、その理由がちゃんと語られます。テレビシリーズの最終回を受け、消滅してしまったアンクと再会した映司が、彼にどんな言葉をかけるのか?とか、『MOVIE大戦アルティメイタム』の劇中でフォーゼドライバーを失ってしまった弦太朗が、今回どうやって変身するのか?とか、いろいろと時間軸による仕掛けがあります。ライダーによっては、「その後」だったり、そうじゃなかったり、いろいろ違いますので、それらの部分にも注意して観てほしいですね。レジェンドライダーについては、過去作をじっくりと勉強させていただきました。あとは、それぞれの作品を担当された"レジェンドプロデューサー"の方たちにも各ライダーに対する強い思い入れがありますので、キャラクターに対しての貴重な意見を参考にさせていただいています

 

— 『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』ビルド武藤将吾&エグゼイド高橋悠也の脚本家対談 - 夏映画ビルドの伏線、ライダーを書く魅力に迫る (4) ビルド、夏映画の"あの行動"の意味 | マイナビニュース

高橋氏は「計算して盛り上げる」ことがとても上手な方だという認識があるが、そんな高橋氏の強みが今回のレジェンドライダーの復活に存分に生きていた。

各レジェンドライダーの登場時間は長くはなかったが、その分一人ひとりが然るべきタイミングで登場し、多くの平成二期シリーズファンを沸かせるように計算された脚本になっている。

(特に映司とアンクはもう反則級でしたね。笑)

 

 

また、ただただ復活するのではなく、一人ひとりの復活にしっかりと意味があった

例えば、天ノ川学園高校をエニグマの設置場所にする (宇宙の力を受けやすいので) ことで弦太朗を登場させたり、最上魁星を財団Xの幹部にすることでアンクの復活を可能にしたり。

 

 

そして、監督や俳優たちの復活への拘りもかなりすごい

 

例えば、葛葉紘汰の復活が『仮面ライダー鎧武』テレビ本編後なのだから当然「始まりの男」の姿で帰ってくると思われていたが、今作ではファンの望みを汲み取った姿で復活してくれている。

(葛葉紘汰役の佐野岳さんとの対談)

──今回本編から約3年ぶりに演じた紘汰は、どのように作り上げたものだったのでしょうか? 予告編には、人間バージョンのビジュアルの紘汰が収められていましたが。

「鎧武」での紘汰は、最終的に神様(始まりの男)になって、達観して終わるじゃないですか。一応今回の映画も最終回のあとの時間軸で、自分が作った宇宙の新しい星にお引っ越しをした紘汰が、地球に危機を感じて戻ってきた設定なんです。だから僕も達観した紘汰としての演技プランを練って行ったんですが、上堀監督(上堀内佳寿也)と話している中で「みんなが観たいのは、明るくていい兄貴みたいな紘汰じゃないかな」となって。苦悩を知る前の紘汰っぽい感じを、現場で監督と相談しながら演じたので、難しかったですね。監督と助監督に「あれ? 本当に紘汰ー?」みたいにいじられて、「やめてくださいよ!」って(笑)。でもやっぱり「この感じだ」ってだんだん思い出して、紘汰になれました。

 

— 「仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL」特集 「仮面ライダー鎧武 / ガイム」佐野岳インタビュー (1/2) - 映画ナタリー 特集・インタビュー

 

また、『仮面ライダーオーズ』のテレビ本編最終話で消滅したはずのアンクの復活も、財団Xの技術を用いたあくまでも暫定的な復活であると説明することで、誰もが納得できるような描写を心掛けている。

渡部:今回久しぶりに映司とアンクが復活するにあたって、誰もが納得のできる内容にしたいという思いがあったんです。特にアンクがどうやってよみがえるかという部分を、ファンの方たちに納得してもらえるものにしてほしいし、当時の2人の雰囲気を十分出していきたいと思っていました。できあがった台本には、そういう要素がすべて入っていたので、これは全力でやるしかないなと気合いが入りました。

— 『仮面ライダーオーズ』コンビ復活は運命だった - 渡部秀と三浦涼介が語る"ライダー後"の絆と葛藤と成長 (1) "アンク復活"は渡部からのオファー | マイナビニュース

 

 

そして前作『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマンVSエグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』との違いの一つとして、レジェンドライダーのサポート役の復活も挙げられる。

仮面ライダーゴーストからは御成。

仮面ライダーフォーゼからはJKや大杉先生。

彼らもしっかりと役割を与えられていていたこともファンとしてはかなり嬉しい。

個人的には、大杉先生がしっかりと先生として逃げ遅れた生徒を救助するような、『仮面ライダーフォーゼ』テレビ本編ではあまり見られなかったような生徒思いな一面も見られて嬉しかった。

 

 

各レジェンドライダーの役者や上堀内監督、レジェンドプロデューサーたちの愛とリスペクトがあって、今作のレジェンドライダーの復活が実現した。

火野映司が崖 (?) から落ちそうになる龍我に手を差し出すシーンや、オーズの最終回『48話 明日のメダルとパンツと掴む腕』のオマージュとも思えるような映司がアンクに手を差し出すシーンなど、かなり二次創作的な場面は確かにあった。

しかし、そこには各レジェンドライダーへのリスペクトと、「ファンのために」という制作側の想いが一貫してあるように感じた。

 

総括

「平成最後」(厳密に言うと「最後」ではないが) を飾るために、レジェンドライダーの俳優やレジェンドプロデューサー方がそれぞれの想いを抱えて集結した

その色々な想いが映画から伝わってくるだろう。

だからこそ最初から最後まで、愛とリスペクトに溢れる仕上がりになっていて、まさに「平成最終章」に相応しい出来になっていたのではないだろうか。

 

一ファンである私がこのようなことを言うのも図々しいにも程があるが、私は、今作は完全に「平成二期シリーズファンへの贈り物」であると考えている。

逆に言うと、今作は新規様向けではない、とも言えるだろう。

(『仮面ライダービルド』テレビ本編未視聴の状態で今作を楽しめる人も勿論いるだろうが。)

 

テレビ本編未視聴の人たちは、スカイウォールに関する説明が全くなかったことに戸惑うだろうし、そもそも今作は『仮面ライダービルド』のテレビ本編と密接にリンクしている。

少なくとも『仮面ライダービルド』のテレビ本編の視聴は不可欠になってくるだろう。

 

また、レジェンドライダーの復活もかなり平成二期シリーズファン側に寄った復活になっていることも否めない。

例えば『仮面ライダーフォーゼ』のテレビ本編未視聴の福士蒼汰さんファンが蒼汰さん目当てで映画を観たら、その出番の少なさに落胆してしまうだろう。

 

ここまでファン側に振り切ったのも英断ではあると思うし、逆に言うとそれほど多くのファンが観てくれることに制作側は見込んでいたのではなかろうか。

正直最初は観客動員数とかが心配だったが、どうやら一位尽くしの快挙になったようで安心した。

それも、平成二期シリーズが仮面ライダーシリーズを着々と成長させ、拡大させることに成功したからであろう。

 

この実績を観て東映がどう思うのかは分からないが、間違いなく今後の仮面ライダーシリーズのクロスオーバーに対する考え方は変わってくるだろう。

 

「冬映画」枠における三部構成が撤廃されて以来様々な試行錯誤がなされてきたが、今作はその実験の一つの終着点と考えても良いのではないか。

勿論、現行作品とのリンクがあるためか現行作品の比重が大きいことなど、まだまだ課題はあるのかもしれない。

(そのための本編終了後のVシネマなのかもしれないが。)

だが、現行作品とのリンクや「夏映画」での共演との繋がり、共同脚本などが今作で功を奏したのは間違いなくそれまでのノウハウの蓄積があったからだろう。

 

そして今回のレジェンドライダーの復活への反響を受けて、ただただレジェンドライダーを出演させるだけでなく、一人ひとりの復活に意味を持たせ、本筋にしっかりと絡めていくようになる思われる。

白倉信一郎氏が従来の「春映画」枠の廃止を宣言したことからもそのスタンスが見て取れる。

『仮面ライダーディケイド』の創造と破壊をきっかけに始まったレジェンドライダー商法ではあるが、俳優や声優を変えてまで出演させたがるスタンスが「春映画」などでは顕著だった。

「レジェンドライダーに対する敬意がない!」等の声が多く、「春映画」枠の興行収入は年々衰退していく一方だった。

当然、レジェンドライダー商法が成功を収めたのだからそこから脱却することはないだろう。

だからこそ、オリジナルの俳優での愛とリスペクトのある復活を更に心掛けていくのではないか、と考える。

 

来年の「冬映画」が本当の平成最後の映画になるため、来年何が起きるのかが既に楽しみだ。

 

 

 

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