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仮面ライダー・映画・音楽に関する感想と考察。

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『機界戦隊ゼンカイジャー』はなぜシリーズの常識を覆す挑戦に踏み切ったのか

先日、『スーパー戦隊シリーズ』の45作目である『機械戦隊ゼンカイジャー』が公開された。
今作は、35作目の『海賊戦隊ゴーカイジャー』ぶりに、過去作とのクロスオーバーを行う記念作品であるようだ。
ただ、記者会見等で明かされた情報によれば、今作には史上初ともなる衝撃的な挑戦がたくさん盛り込まれている様子だ。
『海賊戦隊ゴーカイジャー』の次に製作された作品である『特命戦隊ゴーバスターズ』以降の10年間で、『スーパー戦隊シリーズ』がどのような軌跡をたどってきたのかを振り返りつつ、今作の挑戦の意図に迫っていきたい。


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二本の柱

『仮面ライダーシリーズ』が“挑戦”の歴史であれば、『スーパー戦隊シリーズ』はどちらかというと“安定”を追求してきたシリーズである。


『秘密戦隊ゴレンジャー』が5人の戦隊として始まったことをきっかけに、(一部シリーズを除き) 以後の作品における戦隊チームは基本的に初期メンバー5人前後で編成される“集団ヒーロー”である。
各戦士のスーツデザインは基本的には統一されていて、赤色、黄色、緑色、青色、ピンク色などの色で明確に識別された。
それ故、戦士たちは大体「◯◯レッド」「◯◯ブルー」などと名づけられていた。
そして、その中でも赤い戦士 (レッド) が (『ジャッカー電撃隊』のビッグワンという例外を除き) 必ずチームの中心にいた。


また、『バトルフィーバーJ』以降の全ての作品には“巨大戦”があることも特徴だ。
敵は一度等身大の姿で倒されたら何らかの方法で巨大化するため、戦隊チームは自分たちの巨大ロボットに乗って応戦する。


このように、“集団ヒーロー”と“巨大戦”という二本の柱が『スーパー戦隊シリーズ』を特徴付け、それらがシリーズを通して普遍的なものであり続けたからこそ“安定”しているように思えた
ただ、『特命戦隊ゴーバスターズ』以降の作品では、その二本の柱に対して変化球なアプローチをすることが増えた。


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キカイな“集団ヒーロー”

近年の潮流を見ていると、“集団ヒーロー”を描く『スーパー戦隊シリーズ』は、スーパー戦隊“らしい”チーム編成からの脱脚を目指している印象がある。


たとえば、『動物戦隊ジュウオウジャー』は、ジュウオウイーグルに変身する大和以外の初期メンバー4人はジューマンという異世界の人間である設定であった。

そのため、ジュウマンたちには人間態以外にも獣人としての姿である「ジュウマン態」もあった。


『宇宙戦隊キュウレンジャー』は、9人の初期メンバーで構成される異色の戦隊であった。

「遥か遠い未来の宇宙」を舞台にしていることから、9人の戦士の中に人間態を持たない獣人型の宇宙人やアンドロイドなどがいた。
そして、その人数の多さを逆手に取り、「1人1人がスーパースター、9人揃ってオールスター」というコンセプトのもとで、一人ひとりのメンバーを個性的で且つ力強く描くように工夫された。


続く『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』は、二つの異なる戦隊が対決をするという斬新な構成であった。

同じ作品にレッドが二人いる (ルパンレッドとパトレン1号) ことから、ビジュアル的にも非常にインパクトはある。
また、怪盗と警察という関係であることから基本的には二つの戦隊は対立しつつも、ルパンレンジャー側の正体がパトレンジャー側にバレていないことから人間態では少しずつ親しくなってしまうという、絶妙なバランス感のドラマが描かれた。


このように、スーパー戦隊“らしい”チーム編成から脱却することで、世間に驚きの第一印象を与えることができた
それと同時に、より多種多様な境遇や出自の戦士が活躍する“集団ヒーロー”の在り方を描くことができ、そのおかげで新たな観点からストーリーを作ることができるようになったと考える。
それが功を奏してか、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』は、放送文化の向上に貢献した番組や個人・団体を表彰する「ギャラクシー賞」のテレビ部門を『スーパー戦隊シリーズ』で初めて受賞することができた。



今作は、ゼンカイジャーの初期メンバーの人数だけを見れば、これまでの『スーパー戦隊シリーズ』らしく5人である。
しかし、ゼンカイジャーの戦士5人のうち、ゼンカイザーのみが人間で、残りの4人はキカイノイドというロボである。

とてつもなく巨大な魔の手が、主人公が住む世界にも忍び寄ってきたその時、正義の心をもって立ち上がるのが1人のヒーロー・ゼンカイザーです。そして彼とともに戦う4人の仲間は、なんと“機械生命体”…いわゆるロボットです。そう、本作は1人の“人間”ヒーローと4人の“ロボ”ヒーローが主役というこれまでにない斬新なスーパー戦隊なのです!

『機界戦隊ゼンカイジャー』 2021年3月7日(日)スタート! 【毎週日曜】 午前 9:30~10:00 放送 | 東映[テレビ]

キカイノイドがゼンカイジャーの戦士に変身することは、『動物戦隊ジュウオウジャー』のジュウマンや、『宇宙戦隊キュウレンジャー』の宇宙人やアンドロイドなどが前例としてあることからも、そこまで大きな驚きではない。


ただ、ゼンカイジャーには人間が1人しかいないことはスーツデザインを通してビジュアル的にもかなり強調されているからこそ、その衝撃が大きい
というのも、ゼンカイジュランらキカイノイドがそのままの姿で巨大化して巨大戦で戦うことを想定したデザインであることもあり、ゼンカイザーとはスーツデザインがかなり違うからだ。
これまでの作品では、初期メンバーのスーツデザインは基本的には統一されていて、色で明確に識別してきた。
例外としてスーツデザインにメンバーの個性を取り入れた『宇宙戦隊キュウレンジャー』ですら、ある程度の統一感はあった。
そう考えると、初見では同じ戦隊チームだとは思えないゼンカイジャーの5人のスーツデザインは前代未聞だ。


更には、唯一の人間であり、チームの中心戦士でもあるゼンカイザーが“レッド”ではないことも衝撃的な点だ
『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』の予告にて、『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーに「お前、赤じゃないのか!?」と突っ込まれていたほどだ。
『劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本』と『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』の上映終了後に放映された『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』の予告でゼンカイザーの姿が映し出されたときに、多くの人が驚いたのではないだろうか。
ゼンカイザーはアカレンジャーをモチーフにしていると言われているが、赤色より白色の方が主張が強いスーツデザインだ。
更に、スーツにはスーパー戦隊で定番の五色 (赤色、黄色、緑色、青色、ピンク色) のラインが入っている。
このようなことからも、「五色田介人」という名前の通り、ゼンカイザーは“レッド”担当ではなく、“五色”担当と言った方が正確かもしれない。


ゼンカイジャーは、「5人の“集団ヒーロー”」というスーパー戦隊の特徴は残しつつも、「統一されたスーツデザイン」「中心戦士はレッド」といったこれまでのシリーズにおける伝統を堂々と破ってきた。
そう考えると、チーム編成に関しては『スーパー戦隊シリーズ』の歴史を振り返ってもかなり特殊なものとなっている。


ゼンカイジャーの5人中の4人をロボになったことは、ちょうどCOVID-19の渦中に制作された前作の『魔進戦隊キラメイジャー』 における経験が影響しているという意見も散見された。

というのも、2020年3月にキラメイレッド役の小宮璃央さんがCOVID-19に感染したり*1、2020年4月に政府が緊急事態宣言を発令した際に撮影を中断せざるを得ない状況に陥ったりしたからだ。
ロボ同士の演技だと飛沫感染などのリスクも低減することからも、たしかにキカイノイドの存在はリスク対策の意味合いもあるかもしれない。
ただ、先述したように、シリーズが近年スーパー戦隊“らしい”チーム編成からの脱却を目指していたことを考えると、遅かれ早かれこのような戦隊が生まれる運命にあったと考える。


第一印象の衝撃という意味では、世間の注目をかなり集めることに成功したと私は感じる。
ここから先、この新たな“集団ヒーロー”の在り方がどのように作品の物語に活かされるかに期待したい。

“巨大戦”の進化

戦隊ロボは、同じニチアサ枠の『仮面ライダーシリーズ』などとの差別化を図るうえでは非常に重要な要素である。
また、玩具の売上の中で戦隊ロボの存在が大きいことを、以下のインタビューで東映顧問の鈴木武幸氏が述べていることからも、作中でのロボの販促の重要性が分かる。

――戦隊といえば合体ロボもすごいですね。

そう。売り上げの中でロボットの存在は大きいんです。最近の子どもは特に飽きっぽいんですよ。昔は1体のロボットで1年間遊んでくれたんですけど、今は3カ月くらいで飽きちゃう。だからすぐに2号ロボ、3号ロボと、相次いで出していかないといけないんです。

「5人」だから戦隊ものは米国で大ヒットした | 映画界のキーパーソンに直撃 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

そんな戦隊ロボが活躍する場として設けられている“巨大戦”に関しても、近年の潮流を見ていると、変革が進んでいる。


その変革の発端は、『特命戦隊ゴーバスターズ』であると私は考える。

戦隊ロボが活躍するための“巨大戦”を入れざるを得ないため、制作陣が物語を作るうえで困難が生じていることを、チーフプロデューサーを務めた武部直美氏が以下の記事で証言している。

この企画の取っ掛かりは、「仮面ライダー」になくて「スーパー戦隊」にあるものはなんだということでした。それは、ロボ戦なんですね。そのロボ戦がプラスアルファみたいな扱いになっていることは、以前から感じていまして、靖子さんも「スーパー戦隊」にはクライマックスが2回あるから難しいとおっしゃっていたんです。じゃあ、そうじゃないのをやろうということで、ロボ戦にしっかり取り組んでみようということになったんです。

— 『スーパー戦隊 OFFICIAL MOOK 21世紀 VOL.12 特命戦隊ゴーバスターズ』

従来の『スーパー戦隊シリーズ』では、一度等身大の姿で敵を倒してから巨大戦 (ロボ戦) が始まるため、“二回戦制”の構成になっていた。
ただ、この“二回戦制”の構成の影響で、物語の作り方によっては巨大戦は消化試合であるかのような印象を与えかねない。
そのような問題意識から、『特命戦隊ゴーバスターズ』は巨大戦自体にドラマを与えることで巨大戦により意味を持たせるような作劇になった。


それ以降の作品でも、『スーパー戦隊シリーズ』は“巨大戦”にドラマを盛り込むように果敢に挑戦してきた印象だ。
たとえば、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』では、各々の戦隊ロボへの合体を実現するためには「グッドストライカー」の力が必要であるという設定を付与したため、どちらの戦隊が戦隊ロボで戦うことができるのかを見守るワクワク感をドラマに組み込むことができた。


次作の『騎士龍戦隊リュウソウジャー』は、従来の「“等身大戦”からの“巨大戦”」といったフォーマットを崩す異色の作品となった。
『リュウソウジャー』では敵が等身大の姿で倒される前に勝手に巨大化するため、“等身大戦”と“巨大戦”の壁を構成上撤廃することに成功した。
つまり、従来の“二回戦制”の構成に対して、『リュウソウジャー』では事実上“一回戦制”の構成になった。
その影響で、従来よりも戦いのクライマックスを巨大戦に持ってくることができるような構成になったと、以下の記事でも語られている。

東映の丸山真哉プロデューサーは「巨大な敵を、方法を考えて倒すということを意識しています。巨大な敵を倒すところがクライマックスで、合体して敵を倒すところに物語的なピークをもっていきたいなということをすごく意識してやっています」と思いを語っている。

スーパー戦隊の定番にこだわらないリュウソウジャーの巨大戦「物語のピーク」を意識/戦隊シリーズ/芸能/デイリースポーツ online


このように、『特命戦隊ゴーバスターズ』以降の『スーパー戦隊シリーズ』の作品は「“巨大戦”の変革」の歴史でもあると言えよう




そして、『機械戦隊ゼンカイジャー』は、キカイノイドたちが“等身大戦”と“巨大戦”の両方で活躍する作品であるようだ。

本作の見どころのひとつとなるのは、“機械生命体”であるロボヒーローの巨大化!なんとロボヒーローは人間サイズの敵には等身大で戦い、巨大な敵にはそのまま巨大化して、巨大ロボとなって戦います。ヒーローがメカに乗って戦うという、スーパー戦隊の約束ごとをポジティブに裏切り、ロボヒーローがそのまま巨大戦でも大活躍!

『機界戦隊ゼンカイジャー』 2021年3月7日(日)スタート! 【毎週日曜】 午前 9:30~10:00 放送 | 東映[テレビ]


この斬新な設定のおかげで、ロボが“等身大戦”のときにも登場することになる。
ロボが画面上で活躍する機会が増えることで、ロボの玩具の販促という観点では非常に効果的であることが予測される。
というのも、やはり常識的に考えると、ロボが活躍する時間が長ければ長いほど、子供たちにはより魅力的に写る可能性があるからだ。


また、等身大のヒーローがそのまま巨大化するのだから、“等身大戦”と“巨大戦”の壁がこれまで以上に薄れることにも期待できる。
この変革によって、作品の作り方どのように変わるのかに注目していきたい。


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結論

今作のチーフプロデューサーを務めるのは、白倉伸一郎氏と武部直美氏だ。
『平成仮面ライダーシリーズ』の数多くの作品でプロデューサーを務めた二人であり、最近だと『平成仮面ライダーシリーズ』の20作品記念作品である『仮面ライダージオウ』のプロデューサーも務めた。


白倉氏は、とあるインタビューで『スーパー戦隊シリーズ』のことを以下のように評していた。

— いやいや、でもやっぱすごいと思いますよ。シリーズが長く続いてくると、前にヒットしたパターンを踏襲しようとするシリーズのほうが圧倒的に多いと思うんですよ。
白倉 いや、そのほうが正しいと思いますよ (笑)。『サザエさん』が理想型なんであって、スーパー戦隊のやり方がいちばん理想というか。お色直しだけで成立するっていうと言葉は悪いんですけど、今度のスーパー戦隊は恐竜だとかサムライだとかって言うだけで、なんとなくイメージが湧くじゃないですか。
それがスーパー戦隊のいいところで、「スーパー戦隊とはこういうもの!」って在りようが、もう文化として視聴者に共有されてて、そこに何かしらのモチーフとかテーマとかを与えるだけで、パッとイメージが湧く。やっぱりそれが番組としては正しいやり方なんですね。

— 『語ろう!クウガ アギト 龍騎』(レッカ社、2013年) pp.372-373

このような発言からも、やはり『スーパー戦隊シリーズ』の“安定感”がシリーズの大きな特徴であり魅力でもあることが分かる。
そして、そのような“安定感”を支えてきたのは、“集団ヒーロー”と“巨大戦”という二本の柱である。


ただ、『スーパー戦隊シリーズ』はシリーズは近年、かなり危機的な状況に瀕している。
その証拠として、株式会社バンダイの決算短信における国内トイホビーのIP別売上高を見ると、『スーパー戦隊シリーズ』は2015年以降は年間100億円を切り続けていて、年々実績が下がっている。
膨大なコンテンツに溢れている現代において子供たちに選ばれる作品となるためにも、“変革”が欠かせないことはやはり明白であった。


ただ、やはり『スーパー戦隊シリーズ』たらしめる“集団ヒーロー”と“巨大戦”という二本の柱はシリーズの本質でもあり、決して譲れない部分でもある。
だからこそ、『特命戦隊ゴーバスターズ』以降の『スーパー戦隊シリーズ』は、その二本の柱を守り抜くために、その二本の柱を時代に即してアップデートし続けてきた印象だ
そしてそのアップデートが、“集団ヒーロー”のチーム編成の変革や、“巨大戦”の見せ方の変革といった挑戦である。


『機界戦隊ゼンカイジャー』の挑戦も、そのアップデートの延長線上にあると言えよう。
表層的には、スーパー戦隊“らしさ”が失われたと思うかもしれないが、『スーパー戦隊シリーズ』たらしめる二本の柱はたしかに残っている。
だからこそ、私は今作の挑戦は、割と合理的なものであると考える。


今作が『スーパー戦隊シリーズ』を窮地から救ってくれる作品となることに期待して、私は放送開始を楽しみにしていたい。




感想『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』はなぜリアルタイムで“今”鑑賞すべき作品なのか

2020年12月18日に『仮面ライダーゼロワン』の初の単独映画『劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』が公開された。
元々今作は2020年夏に公開予定だったが、COVID-19 (新型コロナウイルス) の影響で半年弱延期となった。
4月から6月にかけて発令されていた緊急事態宣言中に撮影が中止になったり、撮影再開後も現場における感染対策の徹底のため撮影スケジュールに大きく影響が出たりと、今作がCOVID-19によって受けた影響は計り知れない。
また、映画館や劇場が休業を余儀なくされたり、入場者数を大幅に制限せざるを得なかったりして、制作会社である東映や映画業界自体がかなり苦しい状況だ。


そんな不利な状況下で遂に完成して劇場で公開された今作を、私は公開初日に観に行った。
そして、実際に鑑賞してみると、今作は『仮面ライダーゼロワン』の結末として、そして、純粋に一本の映画としても非常に楽しむことができた。
それと同時に、今作は他の作品と比べても、劇場で公開されている”今”、リアルタイムで鑑賞すべき作品であることを実感した。
その理由を、私の感想を交えながらこの記事で述べていきたい。


劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME 主題歌&オリジナル サウンドトラック


この記事には、映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』や『仮面ライダーゼロワン』、その他関連作品のネタバレが含まれています。ご注意ください。


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渦中の世界

6月に緊急事態宣言が解除されてからは、数多くの出演者やスタッフが働く撮影現場等においてクラスターが発生しないように感染対策に尽力してきた。
撮影再開にあたって、東映も6月に以下のような感染対策を徹底した製作ガイドラインを発表している。

ガイドラインは、同局が定めた「安全を第一優先に濃厚接触者を出さないための撮影を行う」「『3つの密』を避けた撮影を行う」などの方針を前提に作成。撮影時間は、通常よりも短く午前6時から午後10時までとし、打ち合わせは可能な限りウェブ会議システムを使用。現場では演技時の役者を除いてあらゆる場面で2メートルのソーシャルディスタンスを保つことを徹底するとしている。

テレ朝系「仮面ライダーゼロワン」、6・1撮影再開へガイドライン作成 - サンスポ

このように、撮影現場では感染拡大防止のために最善を尽くしつつ、各制作会社は変わらずに良質な作品を提供し続けてきた。


バラエティ番組などでは、出演者がフェイスシールドを着用したり、アクリルパネルが設置されたり、出演者同士のソーシャルディスタンスが保たれたりして、「新しい生活様式」を取り入れながら撮影している様子が画面の向こうにいる視聴者の我々にも見えている。
一方で、ドラマや映画などは作品性が高いため、現場の感染対策が画面の向こうの我々には見えないように工夫されている。


このような工夫のおかげで、観客は作品の世界に没入できるような作りになっている。
ただ、それと同時に、作中の登場人物がCOVID-19の渦中にあるこの現実世界とは異なる世界にいることがどうしても伝わってしまう。
そのため、視聴者によっては少し登場人物たちとの距離を感じてしまうこともある。
これは、特にメインターゲットである子供たちから見ると「身近なヒーロー」である仮面ライダーにとっては、その人気にも影響を与えかねない副作用でもある。


その影響か、今作には、COVID-19の渦中にある現実世界を想起させるような描写が散りばめられている。
たとえば、感染対策でマスクを着用することが当たり前となった現実世界の光景を表すべく、諌たちもガスマスクを着用している。
また、感染対策としてリモートで仕事や授業をするようになった「新しい生活様式」を表すべく、登場人物たちはビデオ通話で連絡を取り合っている。
また、(今は電車が満員であることが当たり前に戻りつつあるものの) 緊急事態宣言が発令されて街中を出歩く人が殆どいなかった頃を表すべく、無人の電車に乗る或人の姿などが描かれている。


このように、COVID-19の渦中にある現実世界を生きる我々と似たような状況に置かれた或人たちを描くことで、観客がより或人たちに親近感を覚えることができるようになっているように感じた

体感リアルタイムサスペンス

予告編で「全人類全滅まで、あと60分」という謳い文句が話題を呼んだ通り、今作は世界滅亡までの60分間を仮面ライダーたちと共に戦う体感リアルタイムサスペンスである。
今作の副題『REAL×TIME』も、そのリアルタイムで物語が進行する今作の構成を表している。


“リアルタイムサスペンス”といえば、世界的に人気を博したアメリカのテレビドラマ『24 -TWENTY FOUR-』がその金字塔であり、多くの人にとっては馴染み深い。

『24 -TWENTY FOUR-』は、物語の進行と現実の時間進行が同じ速度で進み、1シーズン24話全てを観ると丸1日の出来事を目撃することができるという構成になっている*1
唐沢寿明さん主演の『24 JAPAN』という題の日本リメイク版が2020年10月からテレビ朝日で放映されていることから、最近再び話題を集めている。
そのような経緯から、今作も『24 -TWENTY FOUR-』を意識した作りになったことが推察できる。


この“体感リアルタイムサスペンス”という構成により、観客は或人たちと共に作中の出来事を体験しているかのような気分になることができる。
タイムリミットまでに何とかエスたちを止めないといけないという或人たちの緊迫感を一緒に味わうことができる。
また、世界を救うために、正にリアルタイムでゼロワンたちが戦ってくれているようにも感じられる。
よって、体感リアルタイムサスペンスであることにより、観客にとって或人たちがより近い存在であるように感じられるというメリットがある


ただ、完全に“リアルタイム”を貫かなかったことに関しては少し残念だ。
たとえば、天津垓たちが野立万亀男を問い詰めている場面でカットが変わると服を着ていた野立がいきなり全裸にされていたりと、リアルタイムに進行しておらず時間が明らかに飛んでいることが分かるシーンがいくつかある。
その詰めの甘さがなければ、恐らく“リアルタイム”の効果は増していただろう。


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それぞれの未来図

今作は、テレビ本編の最終話を経て分かり合うことができた人間とヒューマギアの関係性の集大成であると感じた。


まずは、或人と滅の関係性だ。
『仮面ライダーゼロワン』のテレビ本編の最終話で或人と滅は、本当の意味で分かり合うことができた。
私は以前執筆した以下の記事で、そのことについて詳しく語っている。

人類滅亡を目標に行動し続けてきたテロ組織である滅亡迅雷.netの滅が、今作ではエスが率いる新たなテロ組織による人類滅亡を阻止するために今度は戦う。
「この世界は捨てたもんじゃない」という滅の台詞は、人間の悪意に触れ続けてきた滅が或人と関わっていく中で世界に希望を見出してたことのあらわれにもなっていて、非常に感慨深い。
また、滅が新イズに「心」を説くシーンも、「心」を否定し続けてきた滅が或人に「心」を教えられたことによって成長した姿を写している。


そしてもう一つは、或人とイズの関係性だ。
テレビ本編の最終話の時点でイズはそれまでの記憶を失っていたものの、今作では記憶を取り戻したような描写があった。
そんなイズは、或人とは「社長と社長秘書」といった仕事上の立場を超えた信頼関係をテレビ本編で築いてきた。
今作において、イズが或人を助けるために或人の命令に逆らって駆けつけるシーンは、正にその象徴であると感じた。
或人が変身するゼロワンとイズが変身するゼロツーが並び立つ姿も、そんな二人の関係性の集大成としては非常にしっくりくる。


また、これまでのテレビ本編では見ることがあまりなかった珍しい組み合わせの人間とヒューマギア関係性も描かれた。
たとえば、諌と迅が空中戦で共闘するシーンや、唯阿と亡が一緒に調査するシーンなどがあった。


このように、今作では人間とヒューマギアが「心」を通わせながら手を取り合って生きていく未来が垣間見えた。
そして、テレビ本編からの積み重ねがあったからこそ魅力的に描くことができたのだと感じた。

楽園の創造

今作の中盤までの敵は、仮面ライダーエデンに変身するエスという存在だ。
エスは、楽園ガーディアを創造するために世界中で同時多発テロを起こす極悪非道な存在として描かれた。
エスを演じる伊藤英明さんの、映画『悪の教典』で演じた極悪教師を想起させるような怪演からも、正に“純悪”とも思えるような魅力的な強敵として或人たちの前に立ちはだかった。

悪の教典

悪の教典

  • 伊藤英明
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しかし、そんなエスに対する観客の見方が今作の終盤で大きく変わるのが、今作の面白いポイントだ。
まず、エスが楽園ガーディアを創造しようとしたのは、命を落とした婚約者である朱音に生きていく世界を与えるためであったことが明らかになる。
そして、シンクネットで集まったエスの信者は、“楽園ガーディアに選ばれし人たち”ではなく、実は“滅びゆく世界に残るよう選ばれた人たち”であったことも判明する。
つまり、エスが実行したテロはエスの大切な人のためでありつつ、無差別に命を奪っているわけではなかったことになり、これまでのエスの行為の意味合いが変わってくる。
このように、今作の終盤に突入すると、極悪非道に見えていたエスに対して観客が同情できるように、エスの「心」の中が明かされていく構成となっている。


そして、そのようなエスの心情が明かされた後、或人たちまでもがエスに対して好意的に接するようになる。
勿論、婚約者のために勝手に関係のない人たちを巻き込んだり傷つけたりしたことはダメだと思っているだろう。
ただ、デイブレイクの際にエスが朱音のことをナノマシンで治療しようとした結果、朱音がデータの世界で生きるようになったことについて、或人は「(エスは朱音の) 心を救った」と肯定的に捉えている。
言い換えると、或人は“たとえ実体がなくてもデータの中で朱音の「心」は生きている”と考えている。
このスタンスは、“ヒューマギアにも「心」はある”という或人のこれまでのスタンスの延長線上にあることを考えると非常に理にかなっているように思える。


また、テロ攻撃では人々を苦しめるために使われたナノマシンが、朱音のことを結果的に救うことにも繋がったため、ナノマシンというテクノロジーの功罪も明らかになった。
テクノロジーの功罪という点では、テレビ本編でも「ヒューマギア」というテクノロジーを通して、その可能性と危険性を描き続けてきた。
今作でもあるとは、ナノマシンも同様に、そのテクノロジーを人間がどう扱うか次第では人間を幸せにできるテクノロジーであることを知ることができた。


このように、或人がエスと接していく中で、テレビ本編で描いたテーマが「ヒューマギア」を超えて他のテクノロジーに対しても普遍的に適用されるものであることを描いた
そのため、特に目新しい価値観が今作では紹介されたわけではない。
だが、テレビ本編における最終話までの或人のヒューマギアとの関わり合いに更なる意義を付与してくれたと捉えることができる。


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結論

『仮面ライダーシリーズ』はもちろん、後から動画配信サイトやDVD・Blu-rayで観ることもできる作品ではあるが、やはりリアルタイム性が高い作品である。
というのも、その作品が製作された当時の情勢を大きく映し出している作品だ。
その中でも特に今作は、リアルタイムで多くの方々に“今”劇場で鑑賞してほしいと強く感じた作品だ。
その理由が二つある。


一つ目は、作中の登場人物たちとの心理的な距離を近づけてくれる作品だからだ
ステイホームやソーシャルディスタンスが推奨されているなか、我々は他者との物理的な距離を取らざるを得ない世界で生きている。
だからこそ、“今”を生きる多くの人々は少し寂しさを覚えているに違いない。
或人たちがCOVID-19と似たような状況下にいる設定や、体感リアルタイムスサスペンスという今作の構成のおかげで、我々観客は、COVID-19の渦中に放映された『仮面ライダーゼロワン』の登場人物がより近い存在であるかのように感じることができる。


そして二つ目は、『仮面ライダーゼロワン』をリアルタイムで一年間観てきた人が観るべき最終話の先の後日談として作られているからだ
平成2期以降の「夏映画」は、テレビ本編の最終話直前という微妙な時期に公開されることが通例となっていた。
ただ、今作はCOVID-19の影響で公開が延期になったことで、最終話の放映後に公開されることになってしまった。
今作が公開された段階では『仮面ライダーゼロワン』の放映が完全に終了し、今では『仮面ライダーセイバー』が子供たちの関心の的となっている。
そう考えると、『仮面ライダーゼロワン』の単独映画をこのタイミングで公開することは、従来と比べると不利なのかもしれない。
ただ、最終話の後の物語を描くことができる点を逆手に取り、今作は公開延期が決まってから脚本を練り直したようだ。

『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』は、本来テレビシリーズ放映中の2020年夏に公開される予定で製作が進められていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で製作スケジュールが例年よりも遅れたため、テレビシリーズが最終回を迎えた後に改めて脚本を練り直し、「最終回の"その後"」の時間軸でストーリーが展開することになったという。

『仮面ライダーゼロワン』鶴嶋乃愛が語る、イズに込め続けた思い「重く切ないストーリーの中で癒しを届けたい」 (1) | マイナビニュース

そしてその結果、人間とヒューマギアの関係性や、或人の価値観といった、テレビ本編で最終話まで一年間かけて描いてきたことを存分に活かした作品となった。
よって、リアルタイムでテレビ本編を最終話まで追ってきた人こそ、今作は“今”鑑賞することで最大限に楽しむことができる。


『仮面ライダーゼロワン』が紆余曲折を経てCOVID-19の渦中を乗り越えてきたことを考えると、シリーズの集大成とも言える今作を劇場で鑑賞して色々な感情が込み上げた。
やはり、リアルタイムで鑑賞することでこそ、今作の真価が発揮される。




感想「鈴木絢音1st写真集『光の角度』」はなぜ鈴木の素の姿を写し出すことができたのか

2020年11月10日に、乃木坂46の2期生である鈴木絢音さんの1st写真集『光の角度』が発売になった。


私は、そんな鈴木絢音さんのファンだ。
2期生のお披露目の際にその純粋無垢な様が気になったことがきっかけで、私は鈴木絢音さんのことを応援し始めるようになった。
テレビでは比較的控え目な性格であるかのように映っていたが、実際に握手会で会って話してみると非常に明るくて、そのギャップに驚いたことを鮮明に覚えている。
乃木坂46の1stアルバム『透明な色』の特典で鈴木絢音さんとのツーショット撮影会に当選して二人で写真を撮ったことなども、今思い返すとなかなか貴重な体験だった。


しかし、大学に入学したこともあり、11thシングルの『命は美しい』発売以降は私生活で一気に忙しくなった。
そのため、鈴木絢音さんについて偉そうに語れるほど握手会やライブなどには行けていない。
また、絢音さんが出演している作品などは何となく知ってはいるが、恥ずかしながらどれも鑑賞できていない。
私は今でも絢音さんのことを一人のアイドルとして本当に好きだが、正直今は「絢音さんのことを応援している」と胸を張って言えないほど絢音さんや乃木坂46の活動は追えていない。


ただ、やはり初期の頃から絢音さんを応援してきた身としては、絢音さんの1st写真集発売はビッグイベントだ。
だからこそ、今回はそんな絢音さんの写真集を手にして、私が知らない「今」の絢音さんの魅力に迫りたいと考えた。


鈴木絢音1st写真集『光の角度』


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レンズ越しの信頼

今作のカメラマンを務めた新津保建秀氏は、様々な著名な芸能人の写真集を撮影してきた大御所カメラマンだ。
実は、鈴木さんの希望によって今作のカメラマンを新津保氏が担当することになったことを、以下の記事で述べている。

初の写真集に臨むにあたり、基本的には“おまかせ”を貫いたそうだが、唯一、自分が希望したのがカメラマン。信頼する新津保氏について、「以前、一度撮っていただいた時、すてきに撮っていただいたのでお願いしたいなと思いました。今回の撮影はそこだけ私の意思が入っていて、あとはカメラマンさんやスタッフさんにおまかせ、という形でした。撮影はもちろん、合間に本のお話などもいろいろできて、すごく楽しかったです」とリラックスした雰囲気を作ってくれたと明かす

乃木坂46鈴木絢音、“ファン孝行”できた初写真集 個人の活動で「後輩につなげていく」意志(オリコン) - Yahoo!ニュース

このようなところから、鈴木さんはカメラマンやスタッフのことを信頼して写真集の撮影に挑めたことが分かる。


そして、以下の記事から、新津保氏が鈴木さんの「自然な表情」を引き出すために撮影中に撮り方も工夫をしていたことが分かる。

――写真集は鈴木さんらしくもあり、新津保さんらしくもあると感じます。ちなみに撮影中、新津保さんはどんな感じで鈴木さんを撮られてたんですか?
鈴木:隠し撮りしていました。クローゼットの中やカーテンの隙間から、こっそり撮るみたいな(笑)。下着のカットは、まさにそんな感じで撮っていただいてます。
――この下着のカットはちなみに何をされている時ですか?
鈴木:これは普通に着替えているところです。
――本当に盗撮みたいですね(笑)
鈴木:確かに(笑)。でもそのおかげで、ふとした自然な表情が写っていると思います

乃木坂46 鈴木絢音が語る、“王道ではない写真集”を目指した理由「10年後に見返しても古くならない作品になった」|Real Sound|リアルサウンド ブック

また、今作の表紙も、休憩中に不意に撮られた一枚であることを明かしている*1


こういったエピソードを聞いていると、今作は新津保氏がそのような素の鈴木さんを尊重して撮影した写真集であると感じた。
そして、このように鈴木さんが素の姿を曝け出すことができたのは、鈴木さんが新津保氏をはじめとするスタッフ陣を信頼していたからだと言えよう。


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本の虫

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

鈴木さんには、言うならば生粋の「文学少女」だ。
鈴木さんは、「乃木坂46イチの読書家」とも言われるほどの読書家であり、年間100~200冊も読破するほどだ*2


そのような鈴木さんの読書家としての一面を写すべく、鈴木さんが本を持ったり読んだりしているカットが今作には多く含まれている。
また、鈴木さんは基本的に休日を家で過ごしている*3からか、南国で撮影したにもかかわらず今作には海や砂浜よりも室内で撮ったカットの方が多い。
更には、鈴木さんは家にいるときはずっと眼鏡をかけているということもあり、今作には眼鏡のカットも多い。
これらの演出が合わさった結果、「文学少女」としての鈴木さんの素の姿が強調されたように思える




そして、鈴木さんの「文学少女」としての側面は、今作の構成にも影響を及ぼしている。


特に文学的なのは、全体を通して読むと“繋がり”を感じられるようになっている点だ。
前後のカットにどのような“繋がり”があるのかは明確にはされていないが、その“繋がり”を推察することで、正に読書をしているときの「行間を読む」ような感覚を味わうことができる。


また、今作には、鈴木さんが登場せず、タヒチの風景だけを写したカットも随所に挟まれている。
アイドルの写真集にそのような風景写真が含まれることは非常に珍しいが、今作では敢えて含んでいる。
今作における風景写真は情景描写としての役割を果たしていて、鈴木さんと一緒に未知の土地タヒチの豊かな自然を体験することができる。




このように、文学好きな鈴木さんの一面を写真の中で演出しつつ、作品全体の構成に文学的感覚を取り入れることで、「文学少女」である鈴木さんの個性が滲み出す唯一無二の作品になったと感じる
そして、この作品を通して、「文学少女」としての鈴木さんの個性的な素の姿を知った気分になることができる。


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クールビューティの笑顔

鈴木さんは、あまり笑顔を見せないクールビューティとして有名だ。
テレビに出演するときは、無表情でいることが多く、口数も少ない。
また、鈴木さんの自撮りなどを見ていると、真顔で写っているものが多い。
そういったところから、乃木坂46の冠番組『乃木坂工事中』で『乃木坂イチのクールガール、絢音ちゃんを笑わせろ!』といった企画があったくらい、鈴木さんのクールキャラが乃木坂46のファンの間では定着していたように思える。


しかし、メンバーからは、「プライベートでは常に喋っている」「話し声も大きい」等の証言もあり、素の鈴木さんは決してクールキャラではないようだ。
実際、握手会で鈴木さんと話してみれば、満面の笑みでイキイキと話してくれる。
Showroomで仲のいいメンバーといるときも、和気藹々と話す現代っ子らしい姿も見られる。


そして、今作では数々のカットでそのような鈴木さんの笑顔が見られる。
その理由として、今作の撮影地であるタヒチが選定されたことが大きく影響しているように感じられる。
『光の角度』の撮影地であるタヒチは、鈴木さんとの関連性が薄い土地である。
鈴木さんは、撮影地の選定については以下のように述べている。

 撮影はタヒチ島とモーレア島の二つの島で行われた。「東南アジアや中国も候補にあがっていたのですが、前にも行かせていただく機会があったので『せっかくならまだ行ったことのない場所にしよう』とタヒチになりました」と振り返った。

乃木坂46鈴木絢音、初の写真集は“アイドルの王道じゃない1冊” 「自分らしい作品に仕上がった」 【ABEMA TIMES】

つまり、撮影地がタヒチである必要性はあまりなく、鈴木さんにとっては撮影地を選定するうえで行ったことがない場所であるという点こそが重要であったことが分かる。


過去に写真集を出したメンバーの写真集の撮影地は、そのメンバーの希望に沿って選ばれたり、そのメンバーのゆかりの地であったりと、何かしらそのメンバーと関連がある場所であったことが多い。
堀未央奈さんの1st写真集『君らしさ』は「念願のアメリカ全土」で撮影され*4、北野日奈子さんの1st写真集『空気の色』も「北国で撮影したい」という本人の希望をかなえて北欧・スウェーデンで撮影された模様だ*5
生田絵梨花さんの1st写真集『転調』の場合は、彼女の生誕地であるデュッセルドルフで撮影された*6
このように、他のメンバーの写真集の撮影地と比べてみると、今作の撮影地に鈴木さんと関連性の薄いタヒチが選定されたことは珍しい。


ただ、鈴木さんの性格を鑑みると、この選択は腑に落ちる。
以下のインタビューで自身が述べている通り、鈴木さんは非常に好奇心旺盛な人間だ。

――学習意欲が高かったのですね。
【鈴木】 いえいえ(笑)。好奇心は旺盛なほうかもしれませんが、私は深く突き詰めるよりも、浅く広く関心をもつタイプな気がします。図鑑は文字や絵が綺麗に整理されているのが魅力で、デザインとしても楽しめます。

「本が私と家族をつないでくれた」 乃木坂46きっての読書家・鈴木絢音が語る、本の魅力(PHPオンライン衆知(Voice)) - Yahoo!ニュース

新たな発見ができることに対して前向きな好奇心旺盛な鈴木さんであるからこそ、今作の撮影地が敢えて未知の土地であるタヒチになったと考えることができる。


鈴木さんは、そんなタヒチで実際に撮影した感想を以下の記事で述べている。

― 今回の写真集では、タヒチのタヒチ島とモーレア島と島に訪れていますが、行きたかった場所なのですか?
鈴木:場所はお任せしてセレクトしていただきました。でも本当に海も綺麗で、楽しかったです!これまで積極的に海に行こうと思うことがなかったのですが、この写真集の撮影を通して海が好きになって、行きたいなと思うようになりました

乃木坂46鈴木絢音、初写真集“裏テーマ”に秘密 グループ転換期に思う役割・後輩への想いとは<「光の角度」インタビュー> - モデルプレス

このような発言からも、鈴木さんがタヒチに心を動かされていたことが伝わる。


そして、鈴木さんが真顔でいるカットが今作の大半を占めている一方で、海を眺めたり泳いだりするカットや部屋の中ではしゃぐカットでは鈴木さんの可愛らしい笑顔も見られる。
撮影地のタヒチは、新たな発見ができる未知の土地であったからこそ、素の鈴木さんに近いように思われるこのような笑顔の姿を引き出すことができたのだろう
そう考えると、タヒチは好奇心旺盛な鈴木さんの性格との親和性が高い撮影地だったと思える。
そして、クールビューティーである鈴木さんの可愛らしい笑顔が見られたことで、鈴木さんの素の姿を知った気分になることができる。


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ありのままの21歳

今作では、21歳である鈴木さんの「大人」な一面を見ることもできる。


まず、今作には鈴木さんの水着姿やランジェリー姿が収められている。
鈴木さんといえば、その清楚な見た目や勤勉な性格から「純粋無垢」といったイメージが乃木坂46ファンの間では浸透している。
これまで鈴木さんは肌を露出することがほとんどなかったからこそ、今作のそのような露出度の高いカットは非常に新鮮だ。
鈴木さんは、ボディメイクなどはあまりせずに今作の撮影に挑んだことを以下の記事で述べている。

― そうなんですね!こんなに肌を出すことは今までなかったと思いますが、写真集に向けてボディメイクはしましたか?
鈴木:少し鍛えた時期もあったのですが、あまり成果が出なくて、結局そのままの自然体な姿で挑みました。

乃木坂46鈴木絢音、初写真集“裏テーマ”に秘密 グループ転換期に思う役割・後輩への想いとは<「光の角度」インタビュー> - モデルプレス

このようなところからも、今作では鈴木さんのありのままのヘルシーボディが写し出されていることが分かる。
そのような姿は、正に21歳になった鈴木さんだからこそ魅せることができる「大人」な一面である。


更に、今作の後半には、お酒を飲んで酔っ払ってしまった鈴木さんが笑顔を見せるカットなんかもある。
その笑顔は、握手会やShowroomなどで見せるあどけないものとは打って変わり、妖艶で大人っぽい。
このような姿は、お酒を飲んだからこそ見られたものであったと、鈴木さんは以下の記事で言及している。

SHOWROOMでは、撮影時について「お酒は強くなくて、カクテル1杯も飲んでいないのにこんなに酔ってしまったという……(笑い)」と明かし、「こんなに気の抜いた笑顔はお酒を飲んでいるからこそですよ。なかなか見せないですよ」と語った。

乃木坂46鈴木絢音:“なかなか見せない”キュートな酔いの笑顔 色っぽく… 初写真集「光の角度」新先行カット公開 - MANTANWEB(まんたんウェブ)

お酒を飲んだ後に眠ってしまったという可愛らしいエピソードもあり、そのカットも今作には収められている。
鈴木さんがアイドルであることもあり、公の場でお酒を飲んでいる姿はこれまでなかなか見ることができなかった。
だからこそ、お酒を飲んで気を抜いた姿は、これまで我々が見たことがない新鮮な鈴木さんの「大人」な一面であると感じた。


我々が露出が高めな姿やお酒を飲む姿といった鈴木さんの「大人」な面を見る機会はこれまでほとんどなかった。
そう考えると、今作で写し出された21歳の年齢相応な「大人」の一面は、非常に貴重なものであったに違いない
「大人」な鈴木さんにはあまりにも馴染みがなかったため、私個人はそのようなカットを見ると少し罪悪感すらをも覚えてしまった。
だが、そのような隠されていた一面を見ることができたからこそ、21歳の鈴木さんの素の姿を知った気分になることができる。


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結論

今作の大きな特徴は、やはり鈴木さんの多様な姿を見ることができる点だ。
「文学少女」としての鈴木さん、あどけない笑顔で未知の土地タヒチを楽しむ好奇心旺盛な鈴木さん、「大人」な21歳の鈴木さん。
これらはどれも「今」の鈴木さんを表す姿であるため、今作を読むことで鈴木さんの素の姿に近づけたかのような感覚が味わえるようになっている
そして、このように鈴木さんの素の姿を映し出すことができたのは、タヒチという鈴木さんにとっては発見の多い未知の土地で撮影したことや、信頼できるカメラマンやスタッフと撮影したことのおかげであると考えることができる。


もちろん、写真集の撮影なので、自然体はある程度演出されているものなのかもしれない。
だが、そこはあまり重要ではなく、大事なのは素の姿に迫った“つもり”になることができる点だ。
そう考えると、「[…]ページをめくるたびに移り変わる彼女は素顔なのか、それとも演じているのか——。」という帯文が非常に的確に今作の魅力を表現していると感じた。


今作がきっかけとなり、鈴木さんという人物に魅了される人がきっと増えることでしょう。




鈴木絢音1st写真集『光の角度』

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僕だけの君 〜Under Super Best〜(通常盤)

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  • アーティスト:乃木坂46
  • 発売日: 2018/01/10
  • メディア: CD


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『仮面ライダーセイバー』主演の内藤秀一郎はなぜ文春砲で炎上すべきでなかったのか

『仮面ライダーセイバー』は2020年9月6日から絶賛放映中だ。
仮面ライダーセイバーに変身する主人公の神山飛羽真を、埼玉県出身の1996年生まれの俳優である内藤秀一郎さんが熱演している。


しかし、少し前に『文春オンライン』にて、内藤秀一郎さんがYouTuberのかすさんと交際していることや、路上喫煙をしていたこと、マスクを着用せずにパチンコ店でスロットを打っていることなどが報じられた。


そして、この報道を受けて、多くの人たちが内藤さんのことを「子供にとって悪影響」「意識が低い」などと言って叩いた。
この記事では、本当にこれまでの内藤さんに対する罵詈雑言が妥当であったかかどうかを検証していきたい。
予め言っておくが、私は決して内藤さんの行動を擁護しているわけでも、批判しているわけでもない


メンズユニット Vol.3 :井ノ原快彦 & 道枝駿佑 出演映画『 461個のおべんとう 』/『劇場版「 鬼滅の刃 」無限列車編 』/瀬戸利樹『マリーミー! 』/新原泰佑『17.3 about a sex』/白洲迅『僕らは恋がヘタすぎる』/ラウール(Snow Man)/道枝駿佑(なにわ男子/関西ジャニーズJr) /佐藤龍我(美 少年/ジャニーズJr)/奥野壮/小越勇輝/小関裕太/『仮面ライダーセイバー』主人公内藤秀一郎/中山咲月


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犬飼貴丈の3つの制約

『仮面ライダービルド』で主演を務めた犬飼貴丈さんは、2020年8月に『ダウンタウンなう』というバラエティ番組に出演した際に、『仮面ライダービルド』の主役に抜擢された際にプロデューサーにより私生活で色々と制約をかけられていた旨を証言していた。
その番組内で、プロデューサーから気をつけるよう言われたこととして、「信号無視はしないで下さい」「歩きながら物を食べないで下さい」「女性と手をつないで歩かないで下さい」という3つの制約を犬飼さんは挙げていた。


信号無視は道路交通法第7条といった法律で禁じられているため、「信号無視はしないで下さい」はルール違反 (法律違反) の抑止であると言える。
また、多くの日本人にとって食べ歩きはマナー違反とされているからであるため、「歩きながら物を食べないで下さい」はマナー違反の抑止であると言える。
ルールやマナーに関する制約が設けられていることの背景には、ヒーロー番組の俳優が私生活においても子供にとっての模範的存在であることが望ましいというプロデューサーの考えが恐らくあるのだろう


一方で、「女性と手をつないで歩かないで下さい」のみ、子供への悪影響を及ぼす行為を阻止するために設けられているとは思えず、制約の意図が不明だ。
というのも、女性と手をつなぐこと自体は法律等で禁じられているわけでもなければ、狭い歩道で手をつなぐなど他者に迷惑をかけることでないかぎりマナー違反でもないからだ。
そもそも、犬飼貴丈さんが主人公の桐生戦兎を演じた『仮面ライダービルド』作中には、2号ライダーの仮面ライダークローズに変身する万丈龍我が恋人と手を繋ぐシーンが存在した。
龍我は「正義の味方」である戦兎の相棒的存在として描かれていたため、多くの子供たちが龍我の行動を手本にすることは容易に想像できる。
もし女性と手をつないで歩くことが子供にとって悪影響でありヒーローが取るべき行動ではない、と製作陣が考えているのであれば、そのようなシーンを描くはずがない。
よって、個人的に私は、この制約は「女性スキャンダルへの対策」として設けられたと推測する。
というのも、『仮面ライダーシリーズ』は毎年俳優陣の熱狂的な女性ファンを生んでいるため、俳優に女性スキャンダルが発生するとその番組にも影響が及びかねないからだ。


とにかく、意図はどうであれ、これらの3つの規約はプロデューサーに言われているルールなので、仮に俳優がどれかを破った場合は「ルール違反」になる。
ただ、制約はプロデューサーと俳優の間で決められたことであり、我々も犬飼さんが述べた3つの制約以外に関しては具体的な内容を知らない (というか、そもそも犬飼さん以外の俳優にも同じ内容の制約があるのかすら分からない)。
よって、本当にルール違反であるか不確実であることに対して、我々部外者が憶測のみで俳優を糾弾することは間違っていると私は考える
もし内藤さんが何らかの規約に反した行動をしていたら、追及したり制裁を加えたりするのはその規約を定めた東映や所属事務所などの関係者たちの仕事である。


私がそのようなスタンスであることを念頭においたうえで、皆様にはこの先読み進めてほしい。


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ヒーロー俳優と女性

先述した通り、犬飼さんが挙げていた3つの制約のうち「女性と手をつないで歩かないで下さい」のみ、子供に悪影響を及ぼす行為を阻止するための制約でなく「女性スキャンダルへの対策」であると推測する。
そう考えると、今回文春記事の見出しにもなった内藤さんの女性YouTuberの方との熱愛も、プロデューサーに言われた制約に反している可能性はある。
その場合、制約を設けた東映や事務所と内藤さんが関係者同士で解決すべき問題であり、部外者の我々が首を突っ込んで内藤さんを叩くようなことではない


そして、たとえば、恋愛禁止のアイドルが恋愛していたのであれば世間に対して嘘をついていたと捉えることはできるが、内藤さんは公に恋愛禁止を宣言している俳優ではないので、別に他者に対して嘘をついていたわけではない。
よって、週刊誌に女性と一緒にいるところを撮られたことに関して我々部外者が「意識が低い」と批判することもできない

ヒーロー俳優とタバコ

まずは、内藤さんが喫煙をしていたこと自体について考えていきたい。
内藤さんは成人済みの立派な大人なので、20歳未満の喫煙を禁じる未成年者喫煙禁止法には抵触おらず、ルール違反にはあたらない。


また、内藤さんが喫煙する姿が「子供にとって悪影響」といった声もあった。
たしかに、喫煙は身体に害を及ぼすこともあるが、タバコのせいで身体がどうなろうと、大人である内藤さんの自己責任だ。
内藤さんが喫煙している姿が「子供にとって悪影響」だと自分の基準で判断するのは勝手だが、不法行為でもないのにその判断基準を内藤さんに押し付けるのはおかしい。




一方で、路上喫煙に関しては、条例で制約が設けられている地域があるため、ルール違反になる可能性はある。
以下のサイトには、東京都内の路上喫煙等防止条例の制定状況がまとめられている。

もし内藤さんが喫煙していた場所が、上のサイトで記載されているような条例で路上喫煙が規制されているところであったのであれば、内藤さんは条例 (ルール) に抵触したことになる。
ただ、内藤さんがどこで喫煙していたのかなどの具体的な情報はないため、条例違反の場所で路上喫煙していたと決めつけて叩くのは冤罪にもつながる可能性があるため非常に危険だ。
よって、路上喫煙が禁じられている場所で喫煙していたのかどうかは、司法機関がしっかりと判断するべき内容であり、我々が勝手に私刑を加えるべきことではない


また、路上喫煙がマナー違反であるかどうかに関しては、他者に迷惑をかけていたかによる。
たとえば、路上喫煙等禁止区域であるかどうかにかかわらず、人通りが多い道など周りに非喫煙者がいる可能性のある場所で喫煙していたのであれば、その人たちを受動喫煙のリスクにさらすことになる。
だが、どのような環境で喫煙していたのかが分からない以上、我々はマナー違反と決めつけて内藤さんを糾弾することはできない

ヒーロー俳優とパチンコ

内藤さんがパチンコ店でスロットを打っていたこと自体も同じく、ルール違反でもなければマナー違反にもあたらない。
内藤さんは成人済みの立派な大人なので、18歳未満のパチンコ店への入店を禁じる風営法には抵触しない。
パチンコがギャンブル依存症を誘発する危険性がある点に関しても、本人はそのことを理解して行っているはずだ。
内藤さんがパチンコしている姿が「子供にとって悪影響」だと自分の基準で判断するのは勝手だが、不法行為でもないのにその判断基準を内藤さんに押し付けるのはおかしい。


内藤さんがパチンコ店でマスクを着用せずに遊んでいたことに関しても、写真一枚をみただけで安易に叩くのは非常に危険だ。
感染症対策でマスクを着用することは法令等では義務化されていないため、マスクを着用していなくても法令違反にはあたらない。


現状、入店時に客にマスクを着用してもらうかどうかは個々の店舗や企業に委ねられている。
よって、もし内藤さんが文春に撮られたパチンコ店が入店客にそのような要請をしていたのであれば、マスクをせずに遊んでいた内藤さんはお店が定めたルールに違反したことになる。
このご時世、ほとんどのお店は入店客にパチンコ店はマスク着用をお願いしているので、たしかに内藤さんがルールを破っていた可能性は高い。
ただ、仮にルールを破っていたのであれば、ルールを定めた店舗と内藤さんの関係者同士でやりとりすべき内容であり、当事者でない我々がとやかく言う筋合いはない


我々も関係者となり得るのは、内藤さんが感染症対策を怠ったせいで感染拡大に加担してしまい、我々が属する日本社会全体に迷惑をかけてしまった場合だ。
その「感染症対策を怠った」かどうかの指標として、厚生労働省が提示している「新しい生活様式」がある。

外出時は常にマスクを着用することが当たり前であるかのような風潮はあるが、この「新しい生活様式」に関しては実は以下のような記載がある。

外出時や屋内でも会話をするとき、人との間隔が十分とれない場合は、症状がなくてもマスクを着用する。

新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました|厚生労働省

つまり、「新しい生活様式」に沿って考えると、会話をしていない場合はマスクの着用は不要であると解釈することができる。
文春記事に掲載された内藤さんの写真だけからは、誰かと会話をしていたのかどうかは判断できない。
よって、感染症対策を怠っていたと断定して内藤さんの行動を叩くことはできない


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結論

繰り返し言うが、私は決して内藤さんの行動を擁護しているわけでも、批判しているわけでもない。
私が親であったら、今回の文春記事で取り上げられた内藤さんの行為で子供に真似して欲しくないことはいくつかある。


ただ、「子供にとって悪影響」かどうかは本当に個々人の基準によって変わることであり「普遍的な正しさ」などないことは理解しておくべきだ
もし誰かの行為が自身の子供にとって悪影響であると感じるようであれば、自分の基準を相手に押し付けて行動を抑制するのではなく、そのような行為を真似しないように親がしっかりと教育するべきだ。


たしかに、東映や事務所が俳優に対して制約を設けたことには、ヒーロー番組の俳優が私生活においても子供にとっての模範的存在であることが望ましいという考えが背景にあるだろう。
ただ、俳優がそのように振る舞うように部外者である我々視聴者までもが求める資格はない。
ましてや、部外者の我々が、東映や事務所が設けた制約を勝手に拡大解釈して俳優を叩くこともおかしい。


また、内藤さんが何かのルールやマナーに違反したのであれば、それは関係者同士で解決すべきことあり、部外者の我々が口出すべきことでは決してない。
そして、法律違反であると断定できない行為を取り上げて、確信がないまま叩くことも非常に危険だ。


このことは、内藤さんのことだけでなく、凡ゆる著名人叩きに当てはまると感じる。
近年、過度なバッシングによって精神的に追い込まれて、自身の命を経つ著名人なども数多くいるので、余計にそう感じる。
たしかに、我々日本人には言論の自由があるので、法を犯さないかぎりどんなことを言おうと自由なのかもしれない。
ただ、あなたには本当に誰かの私生活における「正しさ」を判断したり、それを強要したりする資格があるのか、今一度考えてみてほしい。





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感想『仮面ライダーゼロワン』の飛電或人はなぜアークワンに闇堕ちせざるを得なかったのか

『仮面ライダーゼロワン』は2020年8月30日に遂に最終話を迎えた。
人工知能を様々な側面から描いた今作は大きな話題を集めて、いい意味でも悪い意味でも毎週盛り上がりを見せていたと感じた。
だが、今作の中でも、『42話 ソコに悪意がある限り』で飛電或人が心に悪意を宿したことで仮面ライダーアークワンに変身した展開は、恐らく最も多くの視聴者を驚かせた展開だ。
そこでこの記事では、『仮面ライダーゼロワン』の物語を俯瞰したときに或人の闇堕ちはなぜ必要であったかを、振り返っていきたい。


ちなみに、『仮面ライダーゼロワン』は「東映特撮ファンクラブ」で視聴することができる。


仮面ライダーゼロワン VOL.9 [DVD]


この記事には、『仮面ライダーゼロワン』やその他関連作品のネタバレが含まれています。ご注意ください。


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或人は、其雄に本当の父親のように善意をもって育てられた影響で「ヒューマギアは人類の夢」であると信じ続けてきた。
また、『第3章』に入ってからは、シンギュラリティに達したヒューマギアたちに芽生えた“夢”を尊重するようにもなった。
しかし、或人の「ヒューマギアを信じる」という言葉からはヒューマギアの善意に対する盲信が見て取れた。


というのも、それまではヒューマギアがシンギュラリティに目覚めても原則的には善意をもって行動し、ヒューマギアの“夢”などもその製造目的に基づいた善意により生まれたものであるという前提が今作にはあったからだ。
たとえば、モデル型ヒューマギアであればその“夢”は「ランウェイを歩くことでヒューマギアの存在をアピールする」だったし、テニスコーチ型ヒューマギアであればその“夢“は「世界一のテニスコーチになること」だった。
ヒューマギアが悪意に目覚めたとしても、それは衛星アークによるハッキングの影響とされていて、そのような干渉がなければヒューマギアは善意により行動する存在である、と或人は思い込んでいる様子が示唆されていた。


しかし、ヒューマギアが人間からラーニングする存在である以上、人間の悪意に触れ続けて偏ったラーニングをしてしまったヒューマギアであれば自ずと人間に対する悪意を抱くことは当然問題として発生し得る。
実際、『28話 オレのラップが世界を変える!』に登場したラッパー型ヒューマギアのMCチェケラは、自身の意思で人間に対して悪意を抱く特異な例として登場していた。
よって、或人がヒューマギアの善意を信じる根拠は不十分である。


そもそも、今作の製作陣は人工知能を危険な存在として描くことは実際には望んでいなかったのだろう。
そのことについては、昨年に実施されたインタビューで今作の脚本家である高橋悠也氏も以下のように述べている。

高橋 そうですね。今回は、まず、AIが悪いものであるという表現はしたくないと思いました。ヒーロー番組なので、AIを敵として戦う展開はありますが、番組のテーマとしては、AIが人類を不幸にするという見えかたにならないよう、あくまで上手に付き合う方法や、手を取り合って新しい未来に向かっていくような物語を意識しました

親として子どもに伝えるべき人工知能のこと──『仮面ライダーゼロワン』から学ぶ、未来の子どもたちの仕事 | WIRED.jp

人工知能と共存する肯定的な未来を描くためにも、自身の意思で人間に対して悪意を抱く人工知能が生まれる可能性があるという問題に今作はしっかりとアプローチして解決するする必要があった


そして、その問題を滅亡迅雷.netの滅の悪意への目覚めによって今作は提示することになった。
或人が「父親型ヒューマギア (其雄) に育てられた」ことに対して滅が「父親型ヒューマギア」であるという対比などから、或人と滅が表裏一体の存在であることは今作の序盤から描かれ続けてきた。
また、仮面ライダー滅のスーツアクターに、平成仮面ライダーシリーズのほとんどの主役を演じてきた高岩成二さんが選ばれたことからも、当初からラスボス的な存在になることを想定していたと推察することができる。
そう考えると、滅は或人が乗り越えるべき最大の障壁としては非常に相応しい存在であると考える。


今作の序盤から「アークの意志のままに」行動し続けてきた滅もまた、アークの干渉により「人類滅亡」を掲げ続けてきた存在であった。
それまで従ってきたアークが天津垓という人間により人間の悪意を教え込まれていたことや、そんなアークの意志によりヒューマギアが滅びかけたことを考えると、第二のアークを生む原因となりかねない人間がヒューマギアにとっての脅威であるという認識を滅自身も持っていたことは推察できる。
よって、『41話 ナンジ、隣人と手をとれ!』でアークが破壊された後に、「人類滅亡」を心からの“夢”として掲げるようになったことはある意味当然だ。
このように、自身の意志で「人類滅亡」を望むようになった滅は、「人工知能との共存」を掲げる「善意をもってヒューマギアに接する人間」の或人とは対照的な「悪意をもって人間に接するヒューマギア」になった。


『42話 ソコに悪意がある限り』で、滅亡迅雷.netのヒューマギアである滅によって、或人の秘書を務めていたヒューマギアのイズは破壊されてしまう。
大切な存在であるイズを奪われたことに対する滅への「心」からの怒りを感じたことにより或人は仮面ライダーアークワンとなり、初めて自身の中に生まれたヒューマギアに対するどうしようもない悪意と向き合うことになった。


バンダイ 仮面ライダーゼロワン RKF 仮面ライダーアークワン シンギュライズセット

或人の闇堕ちにより、それまでヒューマギアに善意をもって接してきた或人でさえ悪意に取り憑かれてしまう可能性が提示された。
つまり、「心」をもつ存在であれば誰にでも「心」の中に善意と悪意の両方を持つ。
だからこそ、「心」を持つ滅も悪意だけではなく善意も有していることを或人が信じる明確な根拠ができた。
その結果、或人の「ヒューマギアを信じる」という言葉がただの空虚なものではなく、根拠に基づいたものに変わることができた。
ヒューマギアの善意に対する「盲信」が「確信」へと変わるきっかけとなったことを考えると、或人の闇堕ちは『仮面ライダーゼロワン』における或人の成長にとっては必要不可欠であったと考えることができる


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或人は、それまではヒューマギアに対しては善意をもって接してきたため、悪意を知らない人間であったとも言えよう。
しかし、悪意を知らなければ滅の中の制御できない悪意に対してちゃんと向き合うことはできなかっただろう。
だからこそ、イズを奪われたことに対する滅への「心」からの怒りを感じることで、或人は悪意とはどういったものかを身をもって感じて、悪意のある「心」を理解する必要があった。


そもそも、『42話 ソコに悪意がある限り』で滅がイズを滅ぼしてしまったのは、自分には「心」など存在しないと頑なに信じてきたのにもかかわらず、人類滅亡を「心」から望んでいることをイズに指摘されてフラストレーションを覚えたからだ。
だが、そのようなフラストレーションを覚えたこと自体、滅の中には「心」という未知の概念に対する恐怖があったことの表れだ。
「恐怖」を感じたことは、つまりは滅の中には感情を覚える「心」があることの証だ。
更には、『43話 ソレが心』で悪意に取り憑かれてしまった或人が迅のことを誤って破壊してしまったせいで、滅も大切な存在を奪われてしまい、或人に対して「心」からの怒りを感じることになった。
結果的に、「心」を否定してきた滅が「心」から湧き上がる感情を覚えることで、自身の「心」と向き合わざるを得ない状況ができあがった。


このように、或人と滅は、大切な存在を奪われ、相手にとっての大切な存在も奪うという経験を同じくした。
そして、この経験により、大切な存在を奪われたときの「心」の痛みをお互いに教え合うことになった。
そのようにお互いの痛みを理解することができたからこそ、お互いにわかり合って悪意の連鎖を止めることができた。
そう考えると、或人と滅が本当の意味でわかり合うためにも、或人の闇堕ちは必要不可欠であったと感じる


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「心」をもつ存在であれば誰にでも「心」の中に善意と悪意の両方を持つからこそ、「心」を持つ人工知能にもその両方がある。
だからこそ、ラーニングをする人工知能とは「心」を教え合うことで、お互いに悪意を乗り越えることができる強い「心」を持つ存在へと成長できる。
そのようなことを、シンギュラリティに達した人工知能との共存の可能性として今作は提示してくれたと感じた。
よって、或人が闇堕ちして、或人と滅がお互いに悪意を乗り越える展開を今作にクライマックスに持ってきたのは、今作として「人工知能と共存する未来」の可能性を提示するためにも必要不可欠だったと感じる
意外性のある展開によって視聴者を惹きつけつつ、人工知能の課題に対する『仮面ライダーゼロワン』ならではの答えを描くことに繋がった点では、私は或人の闇堕ちは非常に意義のあるものに思えた。


勿論、或人の闇堕ちには若干の唐突感はあったし、その後の展開にも急展開がかなり多かったと感じる。
その原因として、COVID−19の影響で話数が短縮になったことが大きいと言えよう。


COVID−19の影響がなければもう少し納得感のある筋運びになったのでは、という残念な気持ちはたしかにある。
だが、『仮面ライダーゼロワン』は、製作陣や俳優が未曾有の危機の中で様々な困難を乗り越えて何とか綺麗に完結させてくれた作品であることは事実だ。
だからこそ、彼らの並々ならぬ努力によって完成した今作の最終章の魅力が、この記事を通して少しでも多くの人たちに伝わって欲しいと切実に思う。





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iPhone/iPadで簡単に割り勘の計算ができる方法を開発してみた (ショートカット、始めよう)

外食や家飲みのときに、ササっと割り勘の計算がしたいときがある。
ただ、暗算や通常の電卓でそのような計算をするのは意外と面倒くさい。


なので、iPhoneやiPadで割り勘の計算ができるお手軽な方法を開発してみた。 
特徴は以下の通り。

  • 外食した際に支払い総額から一人あたりの負担額が算出できる。また、均等に割り切れない場合、上司の負担額にプラスしたり、幹事の負担額からマイナスしたりすることで調整できる
  • 家飲みやホームパーティー等で複数人が立替をしている際に誰がいくら支払うかや貰うかが算出できる
  • 100円玉、1000円札等で支払えるように、丸め単位を設定できる


現在は自粛中なので3密はなるべく避けるべきだが、自粛明けにスマートに割り勘するためにも今のうちにこの記事でその技を習得しておこう。


このショートカットの入手方法や使い方をこの記事で紹介していきたい。
尚、このショートカットを正常に使用するにはiOS13以上のデバイスが必要だ。



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ショートカットの追加

STEP 1: 「ショートカット」アプリを入手

これから紹介する方法を使うためには、まずは「ショートカット」アプリが必要だ。
このアプリは、iOS13からは標準搭載のアプリだが、もしホーム画面から消していたら以下のリンクからアプリを入れ直して欲しい。

ショートカット

ショートカット

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  • 無料

様々なショートカットを入れることでiPhoneやiPadをより便利にすることができるので、「ショートカット」アプリは入れていて損はない。

STEP 2: 信頼されていないショートカットを許可

私が開発したショートカットを「ショートカット」アプリに入れるには、信頼されていないショートカットを許可する必要がある。
以下の手順で、追加を許可してください。
「設定」アプリ→「ショートカット」→「信頼されていないショートカットを許可」をONに変更→「信頼されていないショートカットを許可しますか?」と聞かれたら「許可」を選択

STEP 3: ショートカットをダウンロード

そして、以下のリンクから私が開発した「割り勘計算」のショートカットをダウンロードしよう。

ダウンロード

リンクをアクセスすると、「ショートカット」アプリに移り、「割り勘計算」のショートカットが画面上に現れる。
画面最下部までスクロールし、「信頼されていないショートカットを追加」をタップしてください。


「マイショートカットに追加されました」というダイアログが出てきたら、ショートカットの追加は完了だ。


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ショートカットの使い方 (支払い総額から算出)

外食した際に支払い総額から一人あたりの負担額を算出したい場合は、以下の手順を踏もう。

STEP 1: ショートカットを起動

まずは、ショートカットを起動しよう。


「ショートカット」アプリで「マイショートカット」の画面を開いてください。
そして、そのまま「割り勘計算」のショートカットをタップ

STEP 2: 「支払い総額から算出」を選択

次に、「支払い総額から算出」と「立替金額から算出」のどちらかを選択するメニューが現れる。
ここで、「支払い総額から算出」をタップ

STEP 3: 支払い総額を入力

次に、「支払い総額を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、お会計の総額を入力してから「OK」をタップ


この例では、支払い総額が96100円であると想定する。

STEP 4: カンパ額を入力

次に、「カンパ額を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、カンパ額を入力してから「OK」をタップ


この例では、カンパ額が10000円であると想定する。

STEP 5: 人数を入力

次に、「人数を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、割り勘をする人数を入力してから「OK」をタップ


この例では、人数が8人であると想定する。

STEP 6: 丸め単位を選択

次に、「丸め単位を選択してください」という選択画面が表示される。
ここで、希望する丸め単位を選択

たとえば、支払い金額が細かくなり過ぎないようにざっくりと割り勘をしたい場合は、50円・100円・500円・1000円を選択しよう。
また、支払い金額が細かくてもきっちりと割り勘をしたい場合は、1円・5円・10円を選択しよう。


この例では、丸め単位が100円であると想定する。

STEP 7: 端数の調整方法を選択 (端数が生じる場合のみ)

綺麗に割り切れずに端数が生じる場合、「端数をどのように調整するか選択してください」という選択画面が表示される。
ここで、「プラス調整 (上司等)」か「マイナス調整 (幹事等)」を選択

たとえば、上司などが多めに負担することで端数を調整する場合は「プラス調整」を選択しよう。
また、幹事などが少なめに負担することで端数を調整する場合は「マイナス調整」を選択しよう。


この例では、「プラス調整」を選択したと想定する。

STEP 8: 割り勘の結果

そして、割り勘の結果がこのように表示される。

この例の場合は、プラス調整対象者の上司は11200円と多めに支払い、残りの7人は10700円を支払う。


この結果をメッセージやLINE等で共有したい場合は「OK」をタップ


すると、端数調整がある場合は、「調整対象者の名前を入力してください」と表示される。
ここに調整対象者 (上司や幹事) の名前を入力して、「OK」をタップ


共有シートが表示されるので、共有先のアプリを選択

すると、調整対象者の名前が入った結果がそのアプリに入力される。


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ショートカットの使い方 (立替中の金額から算出)

家飲みやホームパーティー等で複数人が立替をしている際に誰がいくら支払うかや貰うかを算出したい場合は、以下の手順を踏もう。

STEP 1: ショートカットを起動

まずは、ショートカットを起動しよう。


「ショートカット」アプリで「マイショートカット」の画面を開いてください。
そして、そのまま「割り勘計算」のショートカットをタップ

STEP 2: 「支払い総額から算出」を選択

次に、「支払い総額から算出」と「立替金額から算出」のどちらかを選択するメニューが現れる。
ここで、「立替金額から算出」をタップ

STEP 3: 人数を入力

次に、「人数を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、割り勘をする人数を入力してから「OK」をタップ

現在立替金額が0円の人がいても、最終的に割り勘する人として含めたいのであれば人数に含めよう。


この例では、人数が3人であると想定する。

STEP 4: 名前と負担額を入力

次に、「1人目の名前を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、1人目の名前を入力して、「OK」をタップ


そして、「◯◯が立替中の金額を入力してください」という入力要求画面が表示される。
ここで、1人目が立替中の金額を入力して、「OK」をタップ


以上の入力が人数分繰り返し要求されるので、要求が終わるまで入力を続けよう


この例では、以下のように入力したと想定しよう。
美玖 (1人目): 9100円
明里 (2人目): 5030円
美穂 (3人目): 2240円

STEP 5: 丸め単位を選択

次に、「丸め単位を選択してください」という選択画面が表示される。
ここで、希望する丸め単位を選択

たとえば、精算金額が細かくなり過ぎないようにざっくりと割り勘をしたい場合は、50円・100円・500円・1000円を選択しよう。
また、精算金額が細かくてもきっちりと割り勘をしたい場合は、1円・5円・10円を選択しよう。


この例では、丸め単位が100円であると想定する。

STEP 6: 割り勘の結果

そして、割り勘の結果がこのように表示される。

この例の場合は、美玖が3600円を貰い、明里は400円を支払い、美穂は3200円を支払う。
すると、精算後の負担金額がそれぞれ以下のようになる。
美玖 (1人目): 9100-3600=5500円
明里 (2人目): 5030+400=5430円
美穂 (3人目): 2240+3200=5440円
このように、丸め単位を考慮しつつ、それぞれの負担金額がなるべく均等になるように算出されている。


この結果をメッセージやLINE等で共有したい場合は「OK」をタップ
共有シートが表示されるので、共有先のアプリを選択

すると、調整対象者の名前が入った結果がそのアプリに入力される。


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最後に

「ショートカット」アプリには本当にたくさんの使い道があります。
当ブログでは、「ショートカット、始めよう」と題するシリーズで、私が自作した様々なショートカットを紹介しています。
これからも、様々な効率化を図るためのショートカットを紹介していく予定です。
是非よろしくお願いします。




感想『仮面ライダーゼロワン』の“お仕事五番勝負”はなぜつまらないと言われているのか

絶賛放映中の令和1作目の仮面ライダー、『仮面ライダーゼロワン』。
人工知能搭載人型ロボである「ヒューマギア」が人々の仕事をサポートする世の中を描き、そのヒューマギアを開発・派遣する「飛電インテリジェンス」の社長である飛電或人を主人公に据えた非常に意欲的な作品だ。


そんな今作の1話から16話にかけて放映された第一章「滅亡迅雷.net編」では、人間の絶滅を掲げるヒューマギアのテロリスト集団である滅亡迅雷.netとの攻防を描いた。
一方で、17話から29話にかけて放映された第二章「ZAIA“お仕事勝負”編」では、飛電或人が代表取締役社長を務める飛電インテリジェンスと、天津垓が日本支社長を務めるZAIAエンタープライズとの対立にフォーカスした。
そして、天津垓が提案した“お仕事五番勝負”は、飛電インテリジェンスが用意したヒューマギアと、ZAIAエンタープライズが販売するザイアスペックを装着した人間が、様々なお仕事で対決する勝負だ。


そんな“お仕事五番勝負”に対する視聴者からの批判が最近特に目立つ。
この記事では、このような批判がなぜ起こっていて、果たしてこれらは的を射ているのかを、考察していきたい。


ちなみに、『仮面ライダーゼロワン』は「東映特撮ファンクラブ」で視聴することができる。


仮面ライダーゼロワン VOL.5 [DVD]


この記事には、『仮面ライダーゼロワン』やその他関連作品のネタバレが含まれています。ご注意ください。


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脅威に対する悪意

第1章では、ヒューマギアが実際の職場で活躍している姿を描いた。
一方で、第2章で行われた“お仕事五番勝負”では、人間とヒューマギアが対決をするという構図により、人工知能の弱点がより明確になった


一回戦の「生け花対決」では、「心」を持たないヒューマギアが、人間の心の機微が出る生け花の仕事で勝負する姿を描いた。
二回戦の「家売り対決」では、「暮らしの経験」を持たないヒューマギアが、暮らしの空間を提案する家売りの仕事で勝負する姿を描いた。
三回戦の「裁判対決」では、「正義感」を持たないヒューマギアが、人間の人生を左右する裁判の仕事で勝負する姿を描いた。
四回戦の「消防士対決」では、「命」を持たないヒューマギアが、人々の命を救う仕事で勝負する姿を描いた。
五回戦の「演説対決」では、「参政権」を持たないヒューマギアが、ヒューマギア自治都市構想の住民投票に向けて演説で対決する姿を描いた。


そして、それらの仕事の中で、ヒューマギア側に欠けているところを補いながら活躍していく様を描いた。
「生け花対決」の一輪サクヨは、生け花の知識やその極意をラーニングすることで、まるで心があるかのように生け花を生けた。
「家売り対決」の住田スマイルは、不動産のビッグデータと個人情報を照らし合わせることで、顧客のニーズに合わせた精度の高い住宅情報を紹介した。
「裁判対決」の弁護士ビンゴは、相手の表情などを分析して嘘をついているかどうかを判断することで、被告人の冤罪を晴らした。
「消防士対決」の119之助は、スキャナーによって要救助者の負傷度合いを判断したり、命を持たないことを活かして自己犠牲を払ったりすることで、火災に巻き込まれた人々の命を救った。
「演説対決」のMCチェケラは、ヒューマギアならではの能力を見せることはなかったものの、得意のラップを通してヒューマギアが人間の仲間であることを街頭演説で主張した。
このように、「心」「暮らしの経験」「正義感」「命」「参政権」といったヒューマギアが持たないものを必要とする仕事の中でヒューマギアがどのように活躍していくかを”お仕事五番勝負“のそれぞれの対決で描いた。
そして、弱点をかかえる仕事でもヒューマギアが能力面では人間に拮抗していることが判明した。


その影響で、人間がヒューマギアに対して悪意を向け始めたことが、第1章の諸々の展開と比べたときの大きな特徴だと言えよう。


その悪意の向け方として、人間がレイダーになりヒューマギア側の勝負を阻害することが多々あった。
「生け花対決」と「家売り対決」では、仕事を失う脅威に怯える人間側の代表である立花蓮太郎や新屋敷達巳。
「裁判対決」では、ヒューマギアに冤罪が晴らされて自分の検挙率が下がることを恐れた刑事の鳴沢益治。
「消防士対決」では、ヒューマギア側が負けるように仕向けようとしたZAIAの開発部主任の京極大穀。
人間がヒューマギアに悪意を向けレイダーになったのは、ヒューマギアが弱点をかかえる仕事でも人間と同等かそれ以上の成果を残せているからこそである


人間は、自分の立場や状況、更には仕事そのものまでもを脅かす存在に対して悪意を向けるきらいがある。
人工知能搭載人型ロボであるヒューマギアも、或人が主張してきたような「夢のマシン」であると同時に、現代の人々にとっては一つの「脅威」だ
人間の仕事を人間以上にこなすことができる人工知能が登場する未来は、現実世界でも十分にあり得ることである。
また、以下の記事で記載されているように、人工知能によって代替される可能性のある仕事は非常に多いため、人間が仕事を失う可能性も危惧されている。


『仮面ライダーシリーズ』は、その時代の人々にとっての「脅威」を敵側に配置したり、物語の構造そのものに盛り込んだりすることが多々ある。
たとえば、『仮面ライダー龍騎』では、アメリカの同時多発テロ事件を受けて異なる価値観を持つ13人のライダーが各々の「正義」のためにお互いの命を奪い合うライダーバトルを物語の根幹に据えたり。
『仮面ライダー鎧武』では、東日本大震災を受けて「理由のない悪意」であるヘルヘイムを怪人であるインベスの発生源であったり。
そして、人工知能の進歩がめざましい今、現代人にとっては人工知能も「脅威」なのかもしれない。


だからこそ、ヒューマギアのことを「脅威」とみなす人間がヒューマギアに対して向ける悪意を描くことは、今作では避けては通れない道だった。
そして、人間の悪意を描くうえでは、人間がヒューマギアと直接対決することでその脅威としての側面を実感することができる“お仕事五番勝負”という構造は非常に好都合だったと言えよう。


更には、ヒューマギアがマギア化していたのも、結局そのような人間の悪意が原因だったことが“お仕事五番勝負”を通して描かれた。
というのも、レイダーに変身した人間側に襲われたことや、垓に挑発されたことが、ヒューマギアのマギア化につながっていたからだ。
このことから、人間からラーニングするヒューマギアが「有罪」か「無罪」かは、人間のヒューマギアとの向き合い方次第であることが分かる。
“お仕事五番勝負“が、人間がヒューマギアのことを脅威に感じて直接悪意を向けるような構造だったからこそ、人間のヒューマギアとの向き合い方の大切さを強調することができていたと感じる。


このようなテーマ性の都合上、大体の人間がヒューマギアに対して好意的に接していた第1章とは対照的に、“お仕事五番勝負”では悪意を持つ人間が増えた。
ただ、我々視聴者も第1章で既にヒューマギアに対して好意的な印象を抱いているため、ヒューマギアに対して悪意を向けてくる人間側に対してどうしてもフラストレーションを感じざるをえなくなった。


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垓の不正行為


“お仕事五番勝負”を提案した側なのにもかかわらず、垓は、対戦相手のヒューマギアのマギア化を誘発することで勝負を乱し続けた。
「生け花対決」と「家売り勝負」では、垓に脅迫されたZAIA側の対戦相手の人間に悪意を向けられたせいで、一輪サクヨや住田スマイル、最強匠親方は負のシンギュラリティに達し、アークとの無線接続によりマギアになってしまう。
「裁判勝負」と「消防士対決」では、シンギュラリティの兆候を見せた弁護士ビンゴや119之助のことを垓が危険視し、ゼツメライザーを無理矢理装着してマギアにさせる。
「演説対決」では、MCチェケラが垓に挑発され、自らの意思でゼツメライザーを装着してマギアになる。


このように、ZAIA側の反則行為が横行していたことにより、勝負はフェアプレイではなくなった。
更に、一回戦で不正を行った立花蓮太郎のことを糾弾したこともあり、垓の行動に一貫性がないように思えることもあった。


だが、そもそも、 天津垓が“お仕事五番勝負”を仕掛けたのは、ZAIAエンタープライズの利益の追求と、飛電インテリジェンスの獲得が目的であったと考えると、垓のそのような行為にも合点がいく。
ヒューマギアとの対決はZAIAスペックの販促になり、飛電インテリジェンスを手に入れることにもつながるため、垓にとって“お仕事五番勝負”への勝利は必須だ。
だからこそ、ZAIAエンタプライズの評判を下げるような手段を使わずに勝負に勝てさえすればいいのだ。
人間の悪意に反応してヒューマギアがマギアになってしまう現象は、垓や世間からしてみればヒューマギアの脆弱性である。
ヒューマギアの負のシンギュラリティを誘発したり、意思を持つヒューマギアにゼツメライザーを装着したりしたのは、ヒューマギアのそんな欠陥を上手く利用した行為と捉えることができる。
そして、ライバル企業の商品であるヒューマギアの評判を落とすことが、相対的にZAIAの評価向上にもつながる。


「ZAIAエンタープライズの利益の追求」と「飛電インテリジェンスの獲得」を目的に行動していたのだと考えると、勝負にフェアプレイで挑まなかったことも当然だし、垓の行動には一貫性があることが分かる。


「人類は人工知能と共存すべき」という飛電或人や飛電インテリジェンスの主張が、第1章からはブレずに描かれ続けた。
一方で、「人工知能は人類の進化に利用するべき」という垓やZAIAエンタープライズの主張が第2章で描かれた。
この両者の主張の違いは、それぞれの会社の商品であるヒューマギアとザイアスペックの性質の違いにも明確に現れている。
そして、それらの主義主張がぶつかり合い、どちらが正しいのかを証明する場として、垓は“お仕事五番勝負”を持ちかけたはずだ。


だが、そんな両者の主義主張の対立を競うことはあくまでも勝負の表面上の目的であり、実際には垓が自身の真の目的を達成するために勝負を利用したに過ぎず、或人もまんまとそれに乗せられてしまっていた
だからこそ、不正を働いてまでして動く垓に対する苛立ちが生まれ、それに振り回される或人に対しても不満を感じてしまった。


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「お決まり」の流れ

そんな“お仕事五番勝負”の様子は、合計で10話にわたって描かれた。
しかし、その構成自体は非常にワンパターンだったと私は強く感じる。


その大きな原因として、“お仕事五番勝負“中の「お決まり」の流れが確立されてしまったことが挙げられる。
つまり、二話ごとに登場するヒューマギアと仕事こそは違うものの、非常に似たような流れの物語が五回も続いた。


以下が、“お仕事五番勝負”の各勝負の大まかな流れだ。
飛電インテリジェンス側の人間とZAIAエンタープライズ側のヒューマギアが対決。
ヒューマギアに対する悪意を持った人間がレイダーに変身してヒューマギアを攻撃。
シンギュラリティに達したヒューマギアはマギアに変身。
そんなヒューマギアの危険性を垓が主張。
(「演説対決」以外では) 最終的に人間とヒューマギアが和解。


ただでさえ“お仕事五番勝負”という比較的狭い世界の中で物語が展開されているのにもかかわらずこのような「お決まり」の流れができてしまったからこそ、意外性がなくなり、面白みもなくなったのだろう。


更に、一話に一体のヒューマギアとその仕事にフィーチャーする一話完結の方式の第1章とは違い、“お仕事五番勝負”では二話完結で行うようになったことも原因に挙げられる。
二話にわたって展開される「お決まり」の流れの勝負が五回もあったため、結果的に“お仕事五番勝負”が10話も続き、飽きにつながった。


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結論


なぜ“お仕事五番勝負”はつまらなかったのか?
その理由を端的にまとめると、10話にわたり5回も繰り返される「お決まり」の流れの中で、我々が好感を持つヒューマギアに対して人間が悪意を向け続け、更には主人公である飛電或人が我々が嫌う天津垓の掌で踊らされ続ける話を観続けないといけなかったからだ。
そして、その勝負の結果或人側が負けてしまったのだから、“お仕事五番勝負”だけにフィーチャーすると、我々はカタルシスを感じるどころか、フラストレーションが溜まる一方だ。


たしかに、「人工知能の欠点」や「脅威に対して人間が向ける悪意」といった面白い題材はあった。
だが、あまりにも我々がフラストレーションを感じる要素が多かったため、”お仕事勝負“はもう少し短くてもよかったのかもしれない。


色々とつらつらと述べてきたが、私は『仮面ライダーゼロワン』が描こうとしているテーマそのものは時代に即していると思うし非常に楽しんで観ている。
だからこそ、私は第3章での挽回に期待したい。




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